シティ・アーキテクト制,GAJapan,1994年11月
マスター・アーキテクト制について議論する機会があっ た。財団法人建築技術教育普及センターの主催で請師は磯崎新氏である 。建設省の羽生建築指導課長など少人数の会であったが,なぜか僕と芦原太 郎氏が加わった。なぜか , といっても多少の 理由はある
。建築技術教育普及センターで、この間.景観をめ ぐる研究会を行ってきたのであるが, そこでたびたびマスター・ アーキテクト制もしくは現行の建築指舜システムに代わる新たな仕組みについて議論してきたのである 。
ところで, マスター · アーキ テクト制とは何か
。ある建築あるいは都市計画のプロジェクトを,全体デザインを統括する一人の建築家( マスター・ア ーキテクト)を指 名し, 複数の 建築家の
参加のもとに遂行する 。マスター · アーキテクトは,あらかじめ共通のガイドラインを設定しデザインを方向づけるとともに,各建築家のデザインを指導し,調整する 。一般的には以上の よう に言えばいいであろうか。こうした システム をもう 少し一般的に
, 個々の建築と町並みの形成,個々のデザインとアーバン・デザインの関係にまで拡大できないか。
そこで一つの理念として話題になったのが
, シ ティ
・ アーキテクト である。ヨーロッパの楊合, 各都市に シティ・ アーキテ クトがいて,強力な権限のもとに建築のデザインをコントロールしている。そうした シティ· アーキテクトの制度は 日本で 考え られないか。建築確認に携 わる建築主事 さんは現在1,700
名におよぶ という。
自治体の数は 三千数百であるけれど、どの程度シ ティ ・ アーキテクトが存在すればいいのか 。大きな 白治体では地区ごとにマスター· アーキテ クトがい るのではないか 。大きな 白治体では地区ごとにマスター· アーキテ クトがいるのではないか 。任期はどの程度でいいのか。議論はどんどん膨らんでい く。
都市計画と いうのは.実に多様な主体の建築行為によって実践される。その調和を図りながら , 個性のある まち をつく ってい くのは容易なことではない。日本の町の場合.縦割行政の せいもあって, 施策の一買性がない。そこで シ ティ・アーキテクトである。一人の 建築家では なく デザイン・ コミッティーの よう な委員会制の方がいいのではないか 。人数が 多いと思 い切っ
たまちの 整備がで きない 恐れがありは しないか 。信頼す べき建梨家に まかした方が 面白いまちが できるのでないか 。しか し, とんでもない まちがで きた 場合だれが貢任を取るのか。
その後, シティ・ア ーキテク トの 登録制を実際 に始め てみようとい う 話に なっ た((建築技術教育 普及セ ン ター/ T EL : 03-3505 -1831) 。 いずれに せよ , ケース・ スタディを重 ねながら内 容を検討していく必 要があるの だが, 急いで システムを考える ことになった。一瞬浮かんだ シティ ・アーキテクトの イメ ージは以下のよう だ。
① シティ ・アーキテクトは , デザイン 能力にす ぐれ, 個々の建造物の設計のみならず,建造物などさまざまな要素が集合して構成される景 観のあ りかたに深い造詣を有する。 また, デザインのみ なら ず, まちづ くりについて広
範な知識と経験 を有する 。
② シティ ・アーキテクトは , 担当する まちとさ まざ まな縁 をもち , その まちの 歴史, 文化, 気候風土についての 理解にすぐれるとともに , まち の将来のあ り方について高 い見識をもつ 。
③ シティ ・ア ーキテクトは , あるまち(地方自 治体)のまちづくり(建築行政・都市計画)に総合的,持統的に関与し,その町固有の景観形成についてアドバイスを行う 。具体的には ,次のような仕事を行う 。
A:まちの基本構想基本計画の作成
B:まちの景観形成指針やマニュアル等の作成
C:地区計画の指祁, デザ イン・ コードの作成のための調査研究
D:都市計画プロジェクトの指導
E:公共事業のプログラム作成
F:コンペ要綱などの作成,コンペ参加者の 選考
G:個別建築設計のデザイン指導等々。
④ シ ティ ・ アーキテクトは , 以上のよう な仕事 を行う ために, まちと コンサルタント 契約を結 び, その権限と 業務, 責任が規定される。また、一定の報酬が保証される。その役割を最大限にするためには、首長の直属の機関の中に位置づけられることが望ましい。
⑤シテ ィ ・ アーキ テク トは. 任期制として 固定しない 。 また. 任期中は、公共事業の基本設計、実施設計を受注することはできない。
⑥ シ ティ ・アーキテ クトは , 規模によっ て複数制が 老え られる 。その楊合,地区ごとにマスター・アーキテクトを指名するやり方が考えられる。
⑦ シティ・ アーキテクトは ,当該地域の建築家の職能団体と緊密な関係をもち , その活動についてもアドバ イスを行う。また, 場合によっ ては共同して仕事を行う 。
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