飛騨高山木匠塾93年度プログラム,雑木林の世界46,住宅と木材,(財)日本住宅・木材技術センター,199306
雑木林の世界
飛騨高山木匠塾93年度プログラム
布野修司
飛騨高山木匠塾の93年度プログラムが煮詰まってきた。
岐阜県の住宅課長に赴任した井上勝徳氏の強力なサポートもあって大きく飛躍しそうである。井上勝徳氏と言えば、知る人ぞ知る、建設省でも指折りの木造大好き人間である。また、木造に関することは井上に聞けと言われる専門家である。四月七日には、芝浦工業大学の藤澤先生、東洋大学の秋山先生と一緒に岐阜県庁へお邪魔して打ち合せを行ってきた。
今年は、過去二年のインター・ユニヴァーシティー・サマースクールを主体とするプログラムに、今年二年目を迎えた茨城ハウジングアカデミーのサマー研修と岐阜県の「木の匠」シンポジューム、高山一般セミナーおよび地元高山の工業高校生へのセミナー・プログラムが加わる。相当に賑やかになりそうである。
カリキュラムを組むのが難しいほどで、秋山哲一先生を中心にプログラムを練った。以下、細部は変更されるかもしれないのであるけれど、木匠塾本体のスケジュールを中心に紹介しよう。奮って参加されたい。とはいえ、宿舎の設備に今のところ限界がある。八〇人を超えると苦しい。早めに連絡頂ければと思う。
宿舎といえば、塾の拠点となる旧野麦峠製品事業所を払い下げて頂く問題が急速に進行中である。そもそも木匠塾の構想は、使われなくなった野麦峠製品事業所を何か有効に使えないかということから生まれたのであるが、維持管理の問題があり、所有者、管理主体を明確にする必要があった。特に、飛騨高山木匠塾の恒常化、長期的プログラムのためには、拠点となる場所をしっかり保持する体制が不可欠である。冬季の雪下ろしの問題もあるし、アプローチ道路の管理の問題もある。
そこでどうするか。日本住宅木材技術センターに間に入って頂き、地元の高根村に営林署から払い下げて頂く。その基金は飛騨高山木匠塾が主体となって集め、高根村に寄付する。そのかわり、施設を使わせて頂く。夏期以外の使用については、高根村でも考えて頂く。細かい打ち合わせはこれからであるが、うまく行けば、来年以降、さらに様々なプログラムが展開されることになろう。春期や秋期、冬季の利用も具体化するかもしれない。
高根村といえば、「日本一かがり火祭り」である。今年は、
八月七日(土曜日)
である。当然、塾のプログラムもこの日を中心に組まれている。昨年約束した「かがりび祭り」への参加も決まった。軽音演奏の前座出演もあるが、前日までに模擬店用の屋台を製作し、当日は屋台を手伝うのである。当日、人手が足りなくて、食べ物がすぐ無くなるので応援してほしいという。もうけがでれば木匠塾で使って頂いて結構とのことで、高根村の村役場の人たちとも打ち合わせ済みである。
さて、サマースクールは八月一日から一一日の予定である。スケジュールは以下のようだ。
一日 集合 会場設営
二日 会場設営+施設整備実習 オープニング式典 オープニング・レクチャー
三日 大学別ゼミ 測量実習 施設整備実習 レクチャー①
四日 林業経営レクチャー+見学 草刈・伐採実習 屋台製作実習 仮設計画レクチャー
五日 仮設計画レクチャー 足場組立実習 レクチャー②
六日 家具製作レクチャー+見学 屋台製作実習 模擬店準備 レクチャー③
七日 模擬店準備 模擬店・かがりび祭り参加
「木と匠」シンポジューム(高山市)
八日 特別講義① 特別講義② ロシアンルーレット・ゼミ
九日 交流野球大会 レクチャー③
一〇日 大学別ゼミ 高山市内見学 フェアウエル・パーティー
一一日 片付け・清掃 解散
レクチャーは、次の予定である。
オープニング・レクチャー 「すまいとまち」 布野修司(京都大)/レクチャー① 「世界の木造住宅」 太田邦夫(東洋大)/レクチャー② 「木造住宅の担い手育成」 藤澤好一(芝浦工大)/レクチャー③ 「地域のすまいづくり」 秋山哲一(東洋大)特別講義① 降旗隆信(予定) 特別講義② 奥村昭雄(予定)
その他に次のレクチャーも予定されている。
レクチャー④ 「住宅の生産供給システム」 浦江真人(東洋大)/レクチャー⑤ 「すまいの設計と人間工学」 安藤正雄(千葉大)/レクチャー⑥ 「都市と森林のネットワーク」 三澤文子(大阪芸大)/レクチャー⑦ 「高山の民家」 桜野攻一郎
実習内容は、以下の通りである。
①施設整備計画実習
②測量実習
③森林視察 製材見学
④草刈実習
⑤伐採実習
⑥家具製作実習
⑦模擬店屋台製作実習
⑧仮設計画実習 足場組立実習
⑨施設整備実習 シャワー室整備
⑩高山祭り模型製作実習
実習担当の講師陣としては、昨年に引き続いて藤野功(日綜産業)氏が参加。ロープの結び方から足場組立、現場の心得全般について御指導願う。また、森林匠魁塾の佃、庄司の両先生にもお世話になる。さらに、久々野・高山営林署には、森林見学等で講義と見学指導を例年通りお願いしている。施設整備実習がどう進むかはわからないけれど、本格職人を目指す茨城ハウジングアカデミーの生徒?諸君に大いに期待する次第である。
短い期間だけれど、自然に触れ、身体を動かし、木について学ぶ、学生にとってはいい体験である。また、大学間の交流は滅多にない機会である。特に、日本各地の学生が直接情報交換し、議論するのは極めて貴重である。レクチャーや実習は、まだまだたどたどしいのであるが、後々にまで記憶に残る、夏になるとやってきたくなるような、そんなサマースクールにしたいものである。
飛騨高山木匠塾連絡先
芝浦工業大学 藤澤研究室 03ー5476ー3090
東洋大学 秋山研究室 0492ー31ー1134
京都大学 布野研究室 075ー753ー5755
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