いい建築と悪い建築
布野修司
いらない建築などはない。あるのはいい建築と悪い建築だけである。
どんな建築であれ、建てられるからにはいる建築である。たとえ悪い建築であっても、最低、それを建てる設計者や施工者や部品メーカーにとってはなにがしかの利益をもたらすのであるから、いる建築である。
建てない方がいい、あるいは別の建築を建てた方がいい、というのであれば枚挙に暇がない。というより、ほとんど全ての建築がそうだ。稀に、人里離れたところに、要するに開発に取り残されて建ち続けた建物が傑作ということになる。
いい建築とは何か。いい悪いは見方による、などとは言わない。そういうと、いるいらないも見方によるということになる。
いい建築とは壊されない建築である。壊されない建築なんかありうるのか。永久に壊れない建築は物理的にはあり得ないけれど、原理的には方法が3つだけある。ひとつは永遠につくり続ける方法である。永遠に未完であればいい。式年造替による形式保存の方法も入れてもいい。もうひとつは最初から壊れたものをつくればいい。廃墟価値の理論だ。そして、最後はつくらないことである。つくらない建築は壊れることはない。すなわちいらない建築である。
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