途上国建設技術開発促進事業(パッシブソーラーシステム), 建設省・国際建設技術協会, 1999年3月
IDI報告書
京大布野研担当分
目次のパッシブソーラーは、やはり寒冷地向けの言葉だと考えられるので、パッシブデザインに変えました。パッシブクーリングでもいいのですが、「自然の快適さの指向」という意味では、パッシブデザインのほうが、適当な言葉かと思います。
レイアウトは、全体で調整されると思い、図表は別ファイルにしました。
第2章 パッシブデザイン技術
2−1 パッシブデザイン
2−1−1 実験棟のデザイン
2−1−2 コンピューターシミュレーション
2−2−3 インドネシアでの優位性
2−2 実験棟のモニタリング計画
2−2−1 期待する評価項目
2−2−2 モニタリングパターン
2−2−3 モニタリングスケジュール
2−2−4 測定機器設置
第2章 パッシブデザイン技術
2−1 パッシブデザイン
2−1−1 実験棟のデザイン
パッシブデザインは、太陽や自然の風、温度の変化を利用して、建物の熱の流れを制御し、室内環境を快適にすることを目的とする。その対極にあるのがアクティブデザインで、空調設備や照明設備など機械力によって、室内環境を完全にコントロールする方法である。両者には、環境負荷、エネルギー消費量などの違いがあるが、最も基本的な差異は、身体を通して感じる両者の快適さの質の違いである。パッシブデザインの場合、室内外をいかに連続するかまたは遮断するかが重要な設計のポイントになる。
実験棟のパッシブデザインの設計指針を以下の通りである。
a. ポーラスな空間構成と 空気の流れのデザイン
・クロスベンチレーションによる平面計画(図1)
平面計画では、吹きさらしの共用空間の四隅に居室が並ぶ。共用空間は、東西に向かって、大きく開かれている。東西方向は、年間を通じて吹く海風の向きである。また、北側、南側、それぞれの居室の間にも、外気に面した共用空間を設け、南北の通風について配慮している。年間を通じて、南北から北東・南西の向きに吹く季節風を考慮している。実際の風向きは、これらが複雑に組み合わされたものになるが、実験棟は、こうした東西、南北両方に通風軌道を確保し(クロスベンチレーション)、どの風向きにも対応できるように配慮した。
・煙突効果を利用した断面計画(図2)
2階、3階の共用空間のスラブの中心に、1800mm四方の吹き抜けを設けた。また、高い小屋裏の中心に、越屋根を設置した。煙突効果によって暖められた空気が抜けるよう意図されている。また越屋根は、規模によっては共用空間が暗くなるため、トップライトの効果も兼ねている。
・居室の開口部の通風デザイン(図3)
開口部は、クロスベンチレーション、夜間冷気の利用、廃熱の問題を考慮して設計している。外壁の開口部はクロスベンチレーション確保のため、異なる2面の外壁の両方に取り付けられている。またこの外壁の開口部は、下部がジャロジー、上部が通常のガラス窓となっている。一方、共用空間に面したドアおよびドアと一体化した開口部の上部は、下ヒンジの押し出し式窓になっている。夜間に外壁の開口部は下側のジャロジーを開け、共用空間側の開口部は上側を開けることによって、その高さの違いを利用した重力換気を行うことを意図している。室内へ夜間冷気の取り入れ、同時に居室から共用空間への廃熱をスムーズに行うのが目的である。
また、外壁の開口部のガラス窓は、季節風を効率よく受け止められるように、開く向きを決めている。
b. 日射を遮断する屋根デザイン(ダブルルーフ:図4)
日射の遮断のため、実験棟には、躯体に大きな屋根を架けている。小屋裏を大きくとることによって、居室への熱伝達を防ぐ。屋根の内部には、空気層が設けられ、屋根が2枚重ねられたような構造を取っている。ダブルルーフと呼んでいる。より詳細には、このダブルルーフは、5層からなる。上から、瓦、アルミニウムフォイルを利用した遮熱・防水層、空気層、ココナッツ繊維を利用した断熱層、トラスの順である。ココナッツ繊維は、インドネシアでは足拭きマット等として、リサイクル利用されており、身近な低コスト材料である。2階庇は、室内への直接の熱伝達がないため、通常の屋根になっている。
c. 循環水による輻射床冷房システム(図5)
居室部分のスラブ上には、200mmピッチで、直径13mmのポリエチレンパイプが敷かれ、その上をモルタル仕上げしている。パイプ内に循環水を通すことによって、床を冷却する仕組みである。循環水用の貯水タンクは、地中に埋め込むかたちで、1階スラブ下に配置されている。大地の畜冷熱を利用し、夜間に循環水を冷却しておくためである。貯水タンクは、循環前と循環後の水を分離するため2槽に分かれている。循環後の水は、いわゆる中水利用を行っており、洗面、便器、シャワー、台所、太陽熱温水として再利用している。
循環水の供給には、当初、身近な資源利用とより冷たい温度という理由から、井戸水を使用する計画だった。しかし、最終的に水質が問題になり、今回は市水を利用した。また、循環水の動力源は、ソーラーセル(太陽電池)によって電力供給されたポンプ稼働である。ポンプは、バッテリー等を介さず、ソーラーセルに直結されており、雨天で日射の少ない場合や夜間などは、運転されない。
d. 躯体の熱容量の利用
日射や外気の影響に対して、できるだけ躯体に熱容量の大きい材料を使用するほうが有利である。昼間を考えた場合、躯体が受ける熱量が同じとすれば、体積当たりの熱容量が大きな材料のほうが、温度上昇が少ないし、また夜間を考えた場合、同様に、より多くの冷気を蓄積できるからである。実験棟の柱梁等のRC躯体部分は、インドネシアの一般的な場合より、大きめの寸法になっている。外壁は、レンガであるが、モルタル仕上げを厚くすることによって、熱容量が増やされている。床も循環水用パイプの埋め込みを兼ねて、スラブ上に100mmのモルタルを敷くことにより熱容量が増やされている。
実験棟の3階は、木造だが、スケルトンとインフィルを分離するというコンセプトに基づいている。これはまた必要があれば、3階木造壁を異なる材質に交換し試験するためでもある。
2−1−2 コンピューター・シミュレーション
今回使用した熱環境シミュレーションソフト*1は、建物の全体あるいは部分を近似的に閉じられた一室の空間と考えて、熱環境をシミュレートする。実験棟の場合は、各居室の熱環境が、シミュレートの対象である。以下の手順(添付マニュアルより簡略抜粋)を繰り返し行うことによって検討される(図6はa-1とc-2の画面)。
a 建築条件の設定
1開口形状&開口部の仕様 ⋯外形寸法、方位、開口位置と寸法
2開口部の仕様 ⋯熱貫流率、日射透過率
3日除けの仕様 ⋯外形寸法、日除け位置
4床の仕様 ⋯断熱・蓄熱部位厚、仕上げ、日射吸収率、熱伝導率
5東西南北の壁の仕様 ⋯断熱・蓄熱部位厚、仕上げ、日射吸収率
6天井の仕様 ⋯断熱・蓄熱部位厚、仕上げ、日射吸収率
7冷暖房、夜間断熱戸、換気モードの仕様、室内発生熱
b 気候条件の設定
8気候パターンの登録 ⋯緯度、経度、気温等各種気候データ
9気候パターンの入力/変更
c 計算・パッシブ性能予測
11計算の実行〜グラフの作成
12定常計算表示・建物の各部位温度の表示
尚、今回の実験棟で採用したダブルルーフや循環水による輻射冷房システムの効果は、このプログラムで直接、予測することはできない。その性能は、以下に述べるモニタリングを通じて検証されることになる。*2
2−2−3 インドネシアでの優位性
インドネシアにおける居住環境整備の代表的な取り組みとして、1960年代末に始められたKIP(Kampung Improvement Program:カンポン改善事業)がある。*3 主に衛生条件の改善を目的とし、インフラストラクチャーの整備を中心とした居住環境整備が行われた。スラバヤ市の場合、1980年代後半になって、こうした取り組みに一定の成果が見られるようになると、KIPも新たな局面を迎え、高密度居住を解決するために新たな住宅モデルの導入が模索された。この一つの解答が、スラバヤ工科大学J. Silas教授グループとスラバヤ市建築局によるルーマー・ススン・ソンボ(Rumah Susun Sombo)をはじめとする集合住宅建設であった(図7)。*4
ソンボでは、従前居住者の転出を防ぐことを第一義的な目的としており、そのため平面計画も居住者の生活様式に配慮したものとなっている。廊下を兼ねた吹きさらしの広い共用空間の両側に住戸が並ぶのであるが、これは半戸外空間の利用が生活に欠かせないカンポン(インドネシアの下町:村落的要素を保持しつつ、都市化に取り込まれていった)全体の空間構成がモデルとなっている。*5インドネシアの生活様式の十分な理解の上に設計が、なされているのである。その設計理念を受けた集合住宅が、ジャカルタのクマヨラン空港跡地などのハウジングプロジェクトなど、他地域にも建設されており、インドネシア型集合住宅のモデルとして大きく期待されている。このように、ソンボを実験棟設計の下敷きとしたのは、生活様式に合った集合住宅の空間モデルに、パッシブデザインを組み合わせることが、広く居住者に受け入れられるには重要であるとの判断からである。
逆に、パッシブデザインから、ルーマー・ススン・ソンボを含む既存のインドネシアの住まいについて考えてみたい。パッシブデザインを自然エネルギーを有効に利用して快適な熱環境を実現する技術と考える場合、太陽熱発電など代替エネルギー的な発想もあるが、一方で「自然エネルギーの利用」=「自然の快適さの獲得」という、直接的で、無理のない図式がある。完全に空調設備でコントロールされた熱環境を通して、身体が感じる「快適さ」がある一方で、無理のない「自然に近い熱環境」によっても身体は「快適さ」を感じる。この意味で、パッシブデザインの導入は、こうした質の異なる二つの「快適さ」のうち、「自然に近い熱環境」のもたらす「快適さ」への指向性を根本的な前提としているのである。半戸外空間を利用するカンポンやルーマー・ススン・ソンボの空間構成や生活スタイルは、場合によっては居室面積の不足が一因であるにしろ、「快適さ」の指向性の上で、パッシブデザインの前提となる「快適さ」の指向と近い距離にある。つまり、インドネシアの生活様式には、パッシブデザインを受け入れる素地があると考えられる。もっとも、本来、ハウジングの対象となる中低所得者層は、冷房付の居室に生活しているわけではないので、「快適さ」の指向の選択肢を持つわけではない。しかし、特に発展途上国におけるハウジングモデルを考える場合、その重要な条件のひとつに、既存の生活スタイルの変化を最小限に留めることがある。対象となる所得者層の生活スタイルを上手く新しい器の中に連続させることによって、初めて居住者が住み続けられる。居住地が破棄されたり、より高所得層の居住者の流入が起きては、本来の目的が果たされないのである。この点でパッシブデザインの導入は、既存の生活スタイルを大きく変えることなく持続させながら、居住環境を改善するのに非常に適した手段と考えられる。
2−2 実験棟のモニタリング計画
2−2−1 期待する評価項目
モニタリングによって、期待する評価項目は、大きく以下の6点にまとめられる。
a 屋根の効果・・・・ダブルルーフ全体の断熱性能の有効性を検証。さらに、ココナッツ繊維層、空気層、反射層などの各層の個別の断熱性能の検証。
b 床スラブの効果・・輻射冷房システムを稼動することによる床スラブの冷却効果を検証。循環水の温度と冷却効果の関係。
c 通風の効果・・・・クロス・ベンチレーションの有効性検証。
d 夜間換気の効果・・夜間冷気を利用した躯体の蓄冷効果、ジャロジーを通して夜間に重力換気を行う有効性の検証。
f 建物全体の効果・・以上の各部分の熱性能を総合した建物全体の有効性の検証
g その他、共用空間の吹き抜けの効果、各居室と共用空間の使い分けの効果など、データを取った上で有効性が導き出せる期待のある効果
2−2−2 モニタリングパターン
以上の評価項目を念頭において、モニタリングに当たって、5つの測定条件のパターンを設定した。各測定パターンと期待される評価項目の関係を表1に示した。各パターンの測定条件の概要は、開口部の解放・閉鎖と輻射冷房システムの起動・停止によって、以下のようである。
・パターンI :開口部終日解放状態、輻射冷房システム起動
・パターンII :開口部終日閉鎖状態、輻射冷房システム起動
・パターンIIIA :開口部、朝8:00-夕方5:00まで解放(その他の時間閉鎖)、輻射冷房・システム起動
・パターンIIIB :開口部、朝8:00-夕方5:00まで解放(その他の時間閉鎖)、輻射冷房システム停止
・パターンIV :開口部、朝8:00-夕方5:00まで閉鎖(その他の時間解放)、輻射冷房システム起動
2−2−3 モニタリングスケジュール
前述の各パターンは、それぞれ7日間の測定期間を取る。最初の2日間は、試験データ測定となっているが、これは、前のパターンの影響を取り除くための準備期間である。分析には3日目以降のデータを用いた(表2)。
上記の5パターン(5週間)全ての測定を連続して行い、1サイクルとした。全体では、3サイクル繰り返して、合計15週間モニタリングを行った(表3)。
1サイクル中の測定パターンの順番は、次のように計画した。
1.パターンIIIA − 2.パターンIIIB − 3.パターンIV − 4.パターンI −5.パターンII
この順番で行うのは、モニタリング予定期間中に、インドネシアの気候が、乾季から雨季へ近づいていたため、少なくとも最初の1サイクルの測定データ収集への、降雨や曇天などの影響を最小限にするためである。より厳しい気候条件で、パッシブデザインが、より効果的に働くと予想されるパターンから、測定を行ったのである。
尚、上記のスケジュールでモニタリングを実施する以前に、2週間程度の試験モニタリングを実施し、回収されたデータを日本側で検討し、センサーの不良の有無、データ転送方法、本モニタリングに向けての準備事項の確認を行った。全体に過不足なくデータ収集が行われていることが確認されたが、床循環水の温度を測定することが、本モニタリングの測定項目として追加された。
2−2−4 測定機器設置
モニタリングに用いる計測機器は、表4のようである。各機器について簡単に説明を加えたい。「温湿度データコレクター」(商品名「おんどとり」、以下、「おんどとり」と呼ぶ)は、特にある空中の一点の温度と相対湿度の両方を測定できる専用のセンサーを持つ(写真1)。これに対して、「温度データコレクター」は、いわゆるT型熱電対を持ち(以下、「データコレクター」と呼ぶ)を持ち、湿度の計測はできないが、空気温、表面温、水温など、様々な温度の測定が可能で、汎用性の高い温度測定装置である(写真2)。日射計は、電圧積算によって、日射量を記録する装置である(写真3,4)。以上の各機器が、モニタリング実施中に、常に記録を行っていたものである。記録間隔は、すべて10分に設定した。
アスマン温湿度計は、乾球温度と湿球温度の両方が計測でき、また両方の測定値の差から相対湿度を導き出すものである。 これは、「おんどとり」と「データコレクター」のセンサーの誤差を確認するために使用された。モニタリング期間中、3回にわたり、各4時間程度、10分間隔で、3階北東室の温度を測定した。このデータを用いて、センサーや収集データに問題がないことを確認した。
測定個所は、各機器の設置場所は、図8のようである。測定箇所は、大きく、ダブルルーフ、共用空間、居室、貯水タンクに4つ分けられる。居室は、仕上げを行った各階の北東室と南西室のみ測定しているが、この二つの居室のうち、北東室の方が、熱環境的に条件が厳しいため(スラバヤは南緯7度に位置するため)、より詳細にデータを測定した。以下、各部分ごとに測定箇所を示す。
a ダブルルーフ
・瓦表面温度 (測定器機:データコレクター、図版番号DC-11)
・空気層温度 (測定器機:データコレクター、図版番号DC-12)
・断熱材上面温度(測定器機:データコレクター、図版番号DC-13)
・断熱材仮面温度(測定器機:データコレクター、図版番号DC-14)
・天井表面温度 (測定器機:データコレクター、図版番号DC-15)
以上は、全て北東室側のダブルルーフ各層で測定した。
b 共用空間
・1階ピロティ温湿度 1FL+0.1m(測定器機:おんどとり、図版番号OT-1)
・1階ピロティ温湿度 1FL+1.2m(測定器機:おんどとり、図版番号OT-2)
・2階共用空間温湿度 2FL+0.1m(測定器機:おんどとり、図版番号OT-3)
・2階共用空間 温湿度 2FL+1.2m(測定器機:おんどとり、図版番号OT-4)
・3階共用空間 温湿度 3FL+1.2m(測定器機:おんどとり、図版番号OT-5)
・屋根トラス部分温湿度 3FL+4.5m(測定器機:おんどとり、図版番号OT-6)
尚、1階ピロティ1.2mの高さに設置された「おんどとり」は、直射日光を受けず、風通しの良い場所であることから、外気の温湿度を兼ねて測定を行った。
c 居室
・3階北東室床表面温度 (測定機器:データコレクター、図版番号DC-25)
・3階北東室受照壁面外気側表面温度(測定機器:データコレクター、図版番号DC-21)
・3階北東室受照壁面室内側表面温度(測定機器:データコレクター、図版番号DC-22)
・3階北東室グローブ球温度 (測定機器:データコレクター、図版番号DC-26)
・3階北東室温湿度 (測定機器:おんどとり、図版番号OT-8)
・3階南西室温湿度 (測定機器:おんどとり、図版番号OT-10)
・2階北東室床表面温度 (測定機器:データコレクター、図版番号DC-35)
・2階北東室受照壁面外気側表面温度(測定機器:データコレクター、図版番号DC-31)
・2階北東室受照壁面室内側表面温度(測定機器:データコレクター、図版番号DC-32)
・2階北東室グローブ球温度 (測定機器:データコレクター、図版番号DC-36)
・2階北東室天井表面温度 (測定機器:データコレクター、図版番号DC-34)
・2階北東室間仕切壁居室側表面温度(測定機器:データコレクター、図版番号DC-33)
・2階北東室温湿度 (測定機器:おんどとり、図版番号OT-7)
・2階南西室温湿度 (測定機器:おんどとり、図版番号OT-9)
重点的に測定を行ったのは、各階の北東室である。南西室は、比較のため室内の温湿度のみ測定した。また各階の北東室の室温は、「おんどとり」とグローブ球温度(内部にデータコレクターセンサーを挿入)の両方で測定されている(写真22)。グローブ球室温度と通常室温度の差から、輻射冷房の効果を検証するためである。
d 貯水タンク
・輻射冷房給水パイプ内水温 (測定機器:データコレクター、図版番号DC-23)
・輻射冷房排水パイプ内水温(2階より)(測定機器:データコレクター、図版番号DC-16)
・輻射冷房排水パイプ内水温(3階より)(測定機器:データコレクター、図版番号DC-16)
給水側の温度は、床を循環する前なので、2・3階を区別する必要がなく、タンク内の水温に等しい。よってセンサーは一ヶ所とした。排水側は、各階の床を循環した後なので、水温が違うため、それぞれのパイプ内にセンサーを設置した。また輻射冷房パイプは、各階で南北に分岐している。この分岐点に設置されたヘッダーに温度計が取り付けられているが、記録装置はない(写真14)。
e 日射量
・日射計センサーは、南側の2階庇から設置台を設けて、その先端に取り付けた。南側庇においたのは、今回のモニタリング時期に太陽が南側を通っていたためである(影にならないため)。スラバヤは、南緯に位置するので、年間約8ヶ月北側から太陽が照り、残りの約4ヶ月が南側からになる。日射計センサーは、太陽が北側に昇る季節には、北側に移動される。
f アスマン温湿度計
・3階北東室の温度を測定
*1今回使用したシミュレーションソフトは、 "Solar
Designer Ver. 4.1"といい、建設省建築研究所で開発された"PASSWORK"というプログラムをベースとして、市販化されたものである。
*2シミュレートにあたっては、今回のように対象室の周囲に隣室(上下階を含む)が、ある場合は、壁厚、屋根、庇などとして、その効果を近似する必要がある。しかし、この近似の基準がマニュアルには明確に指示されいない。
*3 道路の舗装、側溝整備、上水道の設置等が行われた。詳細は、布野修司, 「インドネシアにおける居住環境の変容とその整備手法に関する研究」, 東京大学学位請求論文, 1987年を参照されたい。
*4"Rumah Susun" は、インドネシア語で「集合住宅」の意味。"Sombo" は、場所の名前。ソンボの建設は、既存のカンポンの従前住居調査から始まり、住民間の権利関係の調整を経て、カンポン全体を集合住宅に建て替えるという非常にユニークなアプローチが取られた。詳細については、山本直彦他,「ルーマー・ススン・ソンボ(スラバヤ,インドネシア)の共用空間利用に関する考察」,日本建築学会計画系論文集第502号,p.87-93,1997年12月を参照されたい。
*5 さらに言えば、ソンボのモデルは、居住者の大半を占めるマドゥーラ島出身者の村落部の住居の構成である。マドゥーラ人は、スラバヤ市のすぐ対岸にあるマドゥーラ島に住む民族だが、移住や季節労働によって、ソンボのあるスラバヤ市北部にも多数が住む。
* 周知のように「パッシブデザイン」とは、元来、ドイツなどヨーロッパの寒冷地で、太陽熱を有効に利用して熱環境を改善する「パッシブソーラー」がもとである。「パッシブヒーティング」と言ってもよいだろう。「パッシブ」という用語は、その発生自体が、近代的な概念である。
これをインドネシアなどの湿潤熱帯に適用しようとすれば、逆になんらかの冷却の仕掛けを検討することになり、つまり「パッシブクーリング」となる。「パッシブデザイン」とは、狭義には「パッシブヒーティング」と「パッシブクーリング」の両者を含む概念で、自然エネルギーを有効に活用して、快適な熱環境を実現する建築設計技術の全体を指すと言えるだろう(これは、シミュレーションやモニタリングといった熱環境の解析技術に支えられる一連のプロセスによって成り立つ)。このように、
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