私の京都新聞評「滋賀県知事選,波乱の背景は?」,京都新聞,20060709
布野修司
三選を目指す現職知事、しかも自公民の三党が推す候補を新人女性候補嘉田由紀子氏が破った。七月二日の滋賀県知事選の結果は全国的にも波紋を拡げつつある。
「全く予想外」「まさか」「なぜ」絶句、「相乗り敗北」衝撃、「市民の力政党破る」「女性の思い反映を」「県民、刷新・変化望む」の文字が三日付けの朝刊に踊っている。投票率は前回より6・27ポイント増だが、45%弱―「目指せ投票率50%超」(六月二五日)という学生たちのキャンペーンも行われたが、若者たちの投票はやはり少なかったのではないか。しかし、新知事の支持率は若者の方が高いという(七月五日 転換・中)。分析はこれからである―、前々回は65%だから「山が動いた」とは言えないにせよ、「風は吹いた」。
ワールド・カップ・サッカー(六月九日開幕)で寝不足のこの一月であったが、身近な紙面は六月一五日告示の滋賀県知事選一色であった。正直なところ、この波乱の予感は紙面から伝わっては来なかった。結果として、投票行動に結びつく争点となったとされる新幹線「新駅」、ダム建設、県行財政改革なども、当初は手探りの報道である(「新駅」争点?決着済?六月一六日)。「もしかすると・・」と思ったのは、六月二六日付の世論調査結果の報道「嘉田氏追い上げる」である。
16のテーマをめぐる「ここが聞きたい」県知事選候補者アンケート(六月一七日~二四日)は、結局ポイントをついていたと思う。が、アンケートはアンケートで公式的である。好感をもったのは「わたしたちの一歩」①~⑤(一七日~二二日)である。大きな争点にはならないにせよ、環境、起業、観光、弱者などの視点が掘り下げられていた。もっと続けて欲しいと思いながら読んだ。選挙報道に携わる記者の署名原稿「添付ファイル」も選挙戦の現場の雰囲気をよく伝えていた。ただ、写真コラム「がまん模様」はありきたりに過ぎた。
選挙戦を制したのは、「もったいない」という日本で忘れ去られようとしてきた言葉である。環境経済学2006世界大会が始まったが、「エコノミー/エコロジー 対立から連携へ」という連載(二七日~七月一日)も暗示的であった。環境問題について造詣の深い新知事には、議会との関係など多くの困難が予想されるが、その初心、マニフェストの実現を期待したい。
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