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2022年5月5日木曜日

私の京都新聞評「地域版は教材の宝庫」,京都新聞,20060813

 私の京都新聞評「地域版は教材の宝庫」,京都新聞,20060813

布野修司

 受験者数の減少、独立法人化の流れの中で、大学は大きく変わりつつある。「特色ある大学支援48件」(八月五日、二五面)は、文部科学省の、いわゆる「特色GP」(特色ある大学教育支援プログラム)の2006年度分の発表である。京滋からは、同志社大、京都外国語大、京都精華大、滋賀大学が選ばれた。大学も、競って教育方法やカリキュラムの特色を競う時代である。

 滋賀県立大学は、この「特色GP」に先行する「現代GP」(現代的大学教育支援プログラム)に選定され(2004年度~2006年度)、最終年度の取り組みを行っている。「近江楽座―スチューデント・ファーム―」という愛称で呼ばれる、学生たちが地域の皆さんと共にまちづくりを学ぶプログラムである。そして続いて、今年度から文部科学省の科学技術振興助成「地域再生人材創出」プログラムの全国一〇大学のひとつに選出された(六月一日、二二面)。大学院に「近江環人地域再生学座」というコース(社会人向けコースも含む)を創設し(一〇月開講)、地域診断からまちづくりまでを組織化できる人材(コミュニティ・アーキテクト)の育成を目指す。

 大わらわでその準備に追われているが、そうした眼で見ると、地域版は情報、教材の宝庫である。

 「国宝・三井寺金堂の大屋根に上って、親子が檜皮ぶき作業を体験」(七月一六日、二二面)、など、夏休みに入ると、「論語を教科書に朗読、大野了佐の思い学ぶ」(七月二六日、二二面)、「サワガニ捕り子ら夢中」(七月二八日、二二面)、「“チョウ距離旅行”どこまで?比良山系でアサギマダラ調査へ」(同、二三面)、「間伐材を活用、いす作れたよ」(八月三日、二二面)など、ほぼ連日、体験学習、地域学習、環境学習の記事が地域の思いを子供たちに託すかたちで伝えてくれる。欲を言えば、ただ楽しかった、よかったではなく、問題点も含めた掘り下げが欲しい。

 地域を超え、全国へつながる動きも、近江八幡市を中心とする「「文化的景観」はぐくもう、全国連絡協が設立総会開く」(七月一九日)、例年の「びわ湖環境ビジネスメッセ」(七月二〇日)など重要である。単に一過性のイヴェント報告に留まらない指摘が欲しい。来年秋の「全国豊かな海づくり大会」へむけて「琵琶湖の現状学び語る場に」(七月一七日)地域面もなって欲しい。琵琶湖は京滋住民のキャンパスである。「琵琶湖からのメッセージ」シリーズ(「共生の視点大切に、増える水草」、七月三一など)は貴重である。

 さらに、NPOの動きについての情報が必須である。地域再生にNPOの力は欠かせない。「かいつぶり」欄の「NPOの力」(七月二〇日 秋元太一)に大いに共感する。

 

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