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2022年5月6日金曜日

私の京都新聞評「防災への意識 紙面で検証を」,京都新聞,20060910

  私の京都新聞評「防災への意識 紙面で検証を」,京都新聞,20060910

 

2006年9月10日

布野修司

 九月一日は、「防災の日」である。今年も、全国各地で、京都市では南区一帯で(九月二日、一面)、滋賀県では、一日早い三一日に高島市で(九月一日、二五面)、三日の日曜日に県内二一会場で(九月四日、地域面)、それぞれに大地震を想定して防災訓練が行われた。高い確率で近い将来地震が起こるとされる琵琶湖西岸断層を抱える京滋の住民にとっては、日常的に、極端にいえば毎日震災に備えている必要がある(「襲う災害、安全どう守る」「防災の日」特集)。「首都圏で大規模停電」(八月一四日)などいつ来るかわからないのが災害である。しかし、「ハザードマップ、市町村6割「未作成」」(八月二三日、三面)、「木造住宅の耐震改修、6町、補助制度なし」(九月二日、二四面)という実態がある。継続的なキャンペーンが必要だと思う。『京都新聞』には日頃から防災関係の記事は多いが、「防災の日」を控えて、とりわけ、八月は防災関係の記事が目立った。「防災・減災フォーラム」の開催(京都、八月一九日。滋賀、八月二八日)など高く評価したい。

 今年の夏は、七月の九州、出雲に始まり、神奈川(八月一七日)、京都府南部(八月二二日)など、全国で水害が多発した。異常気象ということもあり、舗装が進んで雨水が一気に都市河川に流れ込むためにこのところ都市洪水が頻発する。一時間に50ミリ以上降ると下水管が対応できないという事情もある。

 現在、宇治川と大橋川(宍道湖-中海)について河川改修と景観をめぐる検討委員会に関わっているが、「治水」の考え方は大きく変化しつつある。100年とか150年に一度の確率で起こる大洪水に厖大なお金をかけるより、「減災」の方策をとろうという流れがある。国土交通省も「溢れさせて守る」という方針を検討中である。河村琵琶湖河川事務所長も、ハード対策だけでなく、「自分で、みんなで、地域で守る」ソフト対策が重要という(「水害自分で、地域で守れ」八月二九日、二四面)。地域の水防団の重要性も指摘される(「火災や水害で活躍、5団体、7個人が受賞」、八月一八日)。兵庫県には、いざというときに畳を土嚢代わりに設置する「畳堤」という伝統もある。

 嘉田新滋賀県知事にとって、新幹線新駅問題とともに「治水」対策は最重要課題である。防災・減災を様々な角度から掘り下げる継続的記事、特集を期待したい。


 

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