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2022年5月16日月曜日

エコ・サイクル・ハウス,現代のことば,京都新聞,19970203

 エコ・サイクル・ハウス,現代のことば,京都新聞,19970203


エコ・サイクル・ハウス

 PLEA(パッシブ・アンド・ロウ・エナジー・アーキテクチャー)釧路会議(一月八日~一〇日)に出席する機会があった。最後のシンポジウム「エコロジカルな建築」に討論者として出席しただけだから、全貌はとても把握するところではない。しかし、登録者数が一二〇〇名にもおよぶ大変な国際会議であり、今更ながらであるが、環境問題への関心の高さを思い知った。パッシブとはアクティブに対する言葉で、機械力によらず自然のエネルギーを用いることをいう。

 問題提起者のベルグ氏はノルウエイの建築家で、生物学者も参加するガイア・グループを組織し、エコ・サイクル・ハウス(生態循環住居、環境共生住宅)の実現を目指している。興味深かったのは、モノマテリアル(単一素材)という概念である。一次、二次が区別され、一次は木、藁、土など、要するに生物材料、自然材料、二次は、工業材料である鉄、ガラスなどである。要はリサイクルが容易かどうかで材料を区分するのである。

 自然の生の材料であること、製造にエネルギーがかからないこと、公害を発生しないこと、直接的人間関係を基礎としてつくられること、という基本理念を踏まえて提案された完全木造住宅のモデルも面白い。全て木材でつくられ、手工具だけで組み立てられるのである。

 今回は、寒い地域について考えようということであった。しかし、環境問題には、国際的な連帯が不可欠であり、南北問題を避けては通れない、というベルグ氏の発言もあって、湿潤熱帯では考え方も違うのではないか、といった発言をさせていただいた。高緯度では小さな住居が省資源の上でいいというけれど、湿潤熱帯では、気積を大きくして断熱効果を上げるのが一般的である。実際、湿潤熱帯には伝統的民家には巨大な住宅が少なくない。大きくつくって長く使うのである。地域によって、エコ・サイクル・ハウスのモデルが違うのはその理念からも当然である。

 建材の地域循環はどのような規模において成立するのかも課題である。樹木は育っているけれど、山を手入れする人がいない。輸入材の方が安い。建材をめぐる南北問題、熱帯降雨林の破壊はどうすればいいのか。大きな刺激を受けたのであるが、つい考えるのは東南アジアのことであった。インドネシアの仲間たちとエコ・サイクル・ハウスのモデルを考えようとしているせいである。

 二一世紀をむかえて、爆発的な人口問題を抱え、食糧問題、エネルギー問題、資源問題に直面するのは、熱帯を中心とする発展途上地域である。経済発展とともに東南アジア地域にも急速にクーラーが普及しつつある。一体地球はどうなるのか、というわけであるが、クーラーを目一杯使う日本人の僕らがエコ・サイクル・ハウスを東南アジ諸国に押しつけるなど身勝手の極みだ。まず、隗よりはじめよ、である。



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