建築行政,これだけは改めたい,情報公開という唯一の指針、日経アーキテクチャー,19970127
情報公開という唯一の指針
布野修司
「これだけは改めたい」というためには、建築行政全般が頭に入っていないと話にならない。断片的に指摘しても、青臭い議論だ、と一蹴されるのが常だ。それに特に今求められているのは、全ての行政分野における、ひいては日本社会全体の「構造改革」であって、小手先の修正ではないのである。
例えば、建設業の構造改革(建設省経済局)ということで、職人(技能者)教育を改めて(考えて)欲しい、と言ったとする。しかし、それは労働行政の問題であり、文部行政の問題であり、さらに偏差値社会全体の問題につながって、容易ではない。建築指導行政(建設省住宅局)について、取締行政(規制)から誘導行政へ、といっても、具体的な現場では縦割りの施策と補助金の配分システムが問題であり、錯綜する権利関係を解くのは難しい。
縦割り行政を廃せよ、地方分権を、規制緩和を、談合廃止、等々、現在の日本の官僚制度と官僚組織をめぐる議論の中におよそ問題は指摘されている。
しかし、構造改革が一気に行われるなんてことはありえない。議論を持続するためにどうしても必要なことは、情報公開である。唯一の指針といってもいい。開かれた議論の中でユニークな試みも許容する新たな仕組みをつくりあげるしかないと思う。
以上を前提として、敢えてひとつだけ「これだけは改めたい」というとしたら、設計入札である。さらにその廃止に伴う、公開ヒヤリング等を含む公共建築の設計者選定(設計競技)の仕組みの構築である。審査委員会の任期、責任の明確化から、検査士制度あるいはタウン・アーキテクト構想まで、あらゆる個別の問題から構造改革につながる提案が可能なのである。
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