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気になるブラックボックス 布野修司
困った。ブラックボックスが多すぎるというのが日頃の実感だからである。身近なところでいうと大学の建築学科の人事。もう少し、日本全体でオープンに流動化がはかれないか、などと言い出すと薮蛇である。人事は何処の世界でも難しい。学会の選挙、各賞の選考、論文審査・・・、本気で考えると、このテーマはやっぱり困る。
あらゆる賞は情実で決まる、というのは山本夏彦大先生の名言である。コンペや建築賞もまずはそういうものだと思った方が健康的である。そうした上で、誰が誰を押してどういう力学でそうし決定がなされたかがおおっぴらにされればいい。賞が欲しくて料亭で接待とか、酒場で根回しなんてのはうんざりである。
建築のコスト。これがわからない。おそらく最大のブラックボックスではないか。建築業界のありとあらゆる問題が絡む。流通の問題がある、重層下請構造の問題がある、コスト決定のメカニズムを明らかにしようとするとわからない問題にすぐつきあたる。アカデミックな作業として考えた場合にもそうである。ある現場とある現場のコスト比較は如何に可能か。外国に比べて日本の建設費が高いと言われるが実際どうなのか。
そこで突き当たるのはまずは文化の問題である。そう、ブラックボックスというのは文化の問題なのだ。そこら中にブラックボックスを感じるのは日本文化の理解がまだ足りないからである。
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