建築家は働きすぎ?,ゆとりを許さない建築界,日経アーキテクチャー,日経BP社,19920706
建築家は働きすぎ? 布野修司
一般に働き過ぎだと思う。バブル華やかなりし頃には、今忙しくないなら設計事務所をたたんだ方がいい、などと歓迎されたものだが、バブルが弾けてもこうした問いが発せられるところを見ると、その余波は相変わらず続いているのだろう。周辺の建築家をみてもみなさん結構忙しそうだ。
建築家というのは本質的に忙しい人種ではないか。建築をつくりあげるためには無限の決定が必要であり、意欲的に取り組めば仕事はいくらでもあるからである。にもかかわらず、忙しすぎるのは決していいことではない。所員が昼間の町を知らないといった某有名建築家の仕事ぶりなどやっぱり常軌を逸している。映画を見たり、コンサートを聞きに行ったりする余裕がなくて、いい建築ができるわけがない。
問題は社会全体の問題であって、ひとり建築界だけの問題ではないのだけれど、時短の問題をみてもとりわけ建築界はゆとりを許さない体質をもっているようだ。現場では、業界全体で一致した取り組みが必要なのであるが、週休2日制の実現など容易ではない。
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