建築学会賞を論ずる,建築学会賞の「権威」,日経アーキテクチャー,日経BP社,19920608
建築学会作品賞を論ずる 布野修司
建築界に顕彰制度は数多い。それこそ掃いて捨てるほどある。しかし、一応「権威」あるものというとやはり「建築学会賞」ではないか。その次か並んで、文部大臣賞とか芸術院賞とか外国の「権威」ある賞があって、「最高権威」が「芸術院会員」というのが大方の見方だろう。
もっとも、建築学会賞が実質的に「権威」をもっているかどうかは疑わしい。業界で一応「権威」があることになっているだけで、世間ではちっとも認知されてないからである。その証拠に一般誌には発表されない。当選者の喜びの談話がTVニュースになる芥川賞とか直木賞とは雲泥の差異である。
なぜ、建築学会賞が「権威」をもつかというと、賞が乱立するなかで特権的な象徴が必要とされるからである。建築学会賞が、新人賞的だったり、年間賞的だったり、年功功労賞的だったり、結果的に性格を曖昧なままにするのもその象徴効果の保持を機能とするからである。
いずれにせよ、賞の価値は審査員会の編成と個々の審査員の見識に負うところ大である。その点、建築学会賞の審査過程がオープン化されつつあるのはいいことである。裸の「権威」によるのではなく、内容の積み重ねが「権威」となるのが賞の真っ当なあり方だからである。ただ、建築学会賞が真に「権威」をもつためには、さらに一般に開く回路がどうしてもいると僕は思う。
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