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2022年9月30日金曜日

2001年10月 未だ序走・・・表紙案出来る 『建築雑誌』編集長日誌 2001年4月25日~2003年5月31日

 未だ序走・・・表紙案出来る

 

2001101

住宅総合研究財団(東京世田谷)で『すまいろん』のミニ・シンポジウムに参加。陣内秀信さんと対論。

題して「まちの原風景 すまいの記憶は都市を変えるか」。テーマをよく理解しないまま出席。つい最近の引っ越しまで、我が住宅遍歴を語る。拙著『住宅戦争』に図面も載せてある。つくづく思うのは、わが貧困の住宅遍歴は日本の戦後住宅史そのものである。それぞれに住宅遍歴を語ってもらう、こんな特集もおもしろいかもしれない。大邸宅に住みながらローコスト住宅を、とか、超高層マンションに住みながら町屋をまもれ、とか言っている先生が結構いるのだ。

 

2001102

学会賞委員会。編集委員では小嶋君が一緒。僕より若い建築家のなかでは、なんとなく信頼感がある。深く考えて設計している、誠実な感じがいい。出雲市(島根県)の地域交流センター「ビッグハート」の公開ヒヤリング方式のコンペでは僕は審査委員長であった。竣工後、車椅子が使いづらいと大問題になったが、シンポジウムを開催、きちんと対応しているのが強く印象に残っている。

 

2001108

休日であるが、タイからタルドサック講師(チュラロンコン大学)、ジャトゥロン君(キングモンクット工科大学)を編集委員の田中麻里さんが招いたスケジュールに合わせて、アジア都市建築研究会開催。もう十年近く続けていて48回目になる。題して‘The Role of Gentrification in Urban Conservation : The Case of Rattanakosin Historic Center of Metropolitan Bangkok’である。二人とはこの7月バンコクで会ったばかり。内容はショップハウスの保存の問題。ジャトロン君の先生は東大の西村先生のところで学位をとったとか。また、藤森研究室はラッタナコシン島で悉皆調査を実施中である。東アジア、東南アジアは既に共通に議論すべきフィールドである。

 

2001109

情報委員会。理事会。会員数減少の話題。財政問題は危機的で、『建築雑誌』も頁数削減が必死のようだ。頁数より、統廃合によって委員会の数を思い切って減らすとか、もっと本質的な構造改革があると思うけれど、頁数などが標的になる。総合論文集はどうも実施の方向である。「年内に決定して欲しい」と発言したけれど、覚悟したのは、建築年報は廃止、9月号を建築年報に当てる、である。この際、ユニークな年間総括を考えたい(考えるしかない)。

 

20011010日~11

学会賞委員会。一日作品審査。11日に8作品決定。専ら議論になったのは「重賞問題」である。僕の意見は、「重賞」は否定しないけれど「新人賞」的でいい、ということ。作品賞の性格を厳密に決める必要はない、と思う。常に問われているのは審査委員の見識である。

 

20011019

京都会館で京都CDL(コミュニティ・デザイン・リーグ)の秋期リーグ開催。学生たちはパネルをつくって半年の調査結果を発表。14日は鴨川フェスタに参加、子どもたちを集めて「まちづくりゲーム」大好評。先日の理事会で、仙田会長が大学の地域社会に対する貢献の試みとして高く評価すると発言。うまく成長したら、他の「コミュニティ・ベースト・プランニング」の試みと一緒に『建築雑誌』で紹介できるといい。

建築学会の京都の景観に関する特別研究委員会(岡崎甚幸委員長)も一応の作業を終え、市民へ向けてのシンポジウムを12月に開催予定である。高田光雄さんにそのエッセンスを報告して欲しい、とお願いしたところ、本番にとっておくとはぐらかされた。いずれにせよ、提言より実践の段階なのだと思う。

 

20011025

4回編集委員会。上京の新幹線の中で新書をペラペラとめくる。どこか編集長というプレッシャーがあるのかもしれない。いつもは読まないものでも多少気になる。めくったのは『IT汚染』『公共事業の正しい考え方』『自治体・住民の法律入門』『天皇誕生』『謎の大王 継体天皇』である。後の二冊は、浅川先生の特集案とはあんまり関係ないかも知れない。出雲出身の出雲主義者である僕は、かなり古代史には興味がある。二冊とも天皇の誕生とその存続をテーマとしている。

表紙案4案を持参で鈴木一誌さん登場。いよいよ始まる、の予感。1月号は原稿待ち。二月号は、どたばただけれど、古谷、小嶋、塚本、貝島の4研究室の若い力と完成に大いに期待。3月号はほぼOKだけれど、なかなか発注に至らず大崎さんイライラ。4月号は、超大忙氏の伊加賀さん詰めるに至らず。次回に期待。常置欄は、まちづくりノートが少し遅れ気味。但し、概ね方向性出る。

 

4回編集委員会 議事録

 

<日 時>20011025日(木)14:0017:00

<会 場>建築会館202会議室

<出 席>委員長 布野 修司

     幹 事  石田泰一郎・大崎  純・松山  巖

     委 員 青井 哲人・伊香賀俊治・伊藤 明子・岩下  剛・岩松  準

         黒野 弘靖・高島 直之・田中 麻里・Thomas C.  Daniel

         塚本 由晴・土肥 真人・新居 照和・野口 貴文・羽山 広文

         脇田 祥尚

<議 事>

□布野委員長より、議事録をもとに前回議論の確認を行った。

 

□特集企画について

1月号「建築産業に未来はあるか(仮)」について

 末尾の「建築業界の現在・近未来を読むデータ集」(遠藤委員・岩松委員)において、『建築雑誌』の関連特集や文献紹介をしてはどうか、という意見が出された。

 また、伊藤委員から「諸団体のストラテジー+建築界ストラテジー俯瞰図」執筆するための「建設産業を取り巻く状況等に関するアンケート」について、進行状況が報告された。大まかに分類し統計を取ったうえ、全体的な動向を分析する方針との説明がされた。

 *アンケートは、最終的に依頼346件に対して回答125件がありました(回答率:36%)。

 鈴木一誌氏から、1月号の表紙デザイン案が4点示された。

 鈴木氏より、「この4つのグラフを重ねることで何が言いたいのか(言えるのか)が見えてこないように思われる。読者に何を読みとってほしいかを強調してみたらどうか」との指摘がされ、次の案が示された。

 1)グラフは、2つないし3つぐらいが妥当ではないか。

 2)「○○は××である」といったキャッチコピーか、読み解きを用意したらどうか。

 3)グラフに一般社会的事象を重ね合わせたらどうか

 上記の方針に対して、岩松委員から再度検討いただくこととし、3)については菊岡氏の原稿も見ながら最終チェックを加える方針とした。

 表紙の印刷では、白地を基調にし、予算の範囲で用紙も再検討する。

 本文用紙は、可能な限り再生紙を中心に使用することとした。

2月号「公共空間-なんでこうなるの?(仮)」について

 塚本委員から、特集で取り上げる対象のリストが提出された(ほかに「バス停」が追加された)。誌面は全体を見開きで構成し、左ページは全面写真、右ページはインタビュー記事により構成する方針が示された。取材は、担当委員の研究室に所属する学生さんにお願いする。表紙のアイデアは、担当委員の宿題とした。

 *その後、事務局より、布野委員長+担当委員のお名前による正式な取材依頼状を、各取材先にお送りしました。

 なお、布野委員長より、2月号には「2001年度の大会報告」が掲載されることが説明された。この報告は全体的に画一的・議事録的で、読み物として物足りない面があることから、会員に大会の概要をより分かりやすく伝えるために、今回の依頼では「発言者を羅列した画一的な記録よりも、当日の主要なテーマや、中心となった議論、その結果何が明らかになったのか、をご報告いただきたい」旨を強調して依頼したことが説明された。

3月号「建築の情報技術革命(仮)」について

 大崎幹事から最終企画案が提出され、原案どおりで依頼を行うこととした。

 なお、記事が2ページの場合と4ページとでは原稿の密度に大きな差が出やすいことに配慮し、3ページによる依頼も行って全体のバランスを図る方針が説明された。「CALSの現状」の執筆者は未定であったが、建築研究所に当たる方針で今後調整する。特集の末尾で大崎幹事による総括を掲載することとした。

 表紙は、情報関連用語を羅列したものをデザイン化する方針とした。

 また、この特集では難解な用語が多く用いられる場合も予想されることから、読者の理解を助ける「用語解説」欄を設けたらどうかという案が出され、各執筆のページ内かあるいは別ページとして掲載することとした(レイアウトを鈴木一誌氏に依頼)。

 *原稿依頼において、「執筆内容に関連する用語を一つお選び頂いたうえ、100字程度で説明してください」という依頼をしました。

4月号「京都議定書と建築(仮)」について

 伊香賀委員より企画案が提出され、議論した。出された意見は下記のとおり。

・用語の解説を入れたらどうか。

・用語はそれぞれの誌面で、記事に関連付けて掲載したらどうか。

・議定書の発効に伴い、例えば、いままで使ってきた建材が使えなくなる(使わない方が 良い)といった具体例が挙がると良い

・この特集のポイントを、①用語の解説、②地球環境問題に対してわわわれは身の回りで何をすべきか(何ができるか)の2つに置いたらどうか。

 

7月号「室内空気汚染問題の今」について

 岩下委員から企画案が提出され、議論した。今後議論を継続します。

5月号以降の特集テーマについて

 新たに提案された特集企画は下記のとおり。

 ・「建築コスト7不思議」(岩松委員)

 ・「多民族共生社会」(浅川委員)

 ・「インド建築」「非西洋世界の建築」「アジアから近代建築を考える」(新居委員)

 ・「被害調査の方法論」「木質構造特集」(藤田委員)

 布野委員長より、今後のテーマとして下記の大枠が説明された。

 ・5月号「古代遺跡」(浅川委員)

 ・6月号「木造または構造デザイン」(藤田委員) →大会予告号につき小特集

 ・7月号「室内空気汚染問題の現在」(岩下委員、羽山委員)

 ・8月号(都市関係で、北沢委員に原案作成を依頼)

 ・9月号「建築年報2002

 ・10月号(環境関係で、石田委員に原案作成を依頼)

 ・11月号(構造関係で、福和委員・野口委員に原案作成を依頼)

□特集アーカイブスの提案について

 青井委員から、「過去の類似テーマを総括する」という編集方針に基づき、毎月の特集において『建築雑誌』の過去の議論や作業を総括するという提案がなされた。また、1月号を想定した私案が提出された。議論の結果、新たにページ枠は確保せず、必要に応じて特集の枠内に組み入れる方針とした。

□連載について

  下記の依頼を行うこととした。

  →3月号 小笠原伸氏(テーマ:1960年代クレージーキャッツ映画と高度成長)

  →3月号 宇高雄志氏(テーマ:マラッカ)

  →5月号以降は、岩下・羽山・野口の各委員より企画案を提出していただく。

  →3月号 瀧澤重志氏(テーマ:人工生命関係)

    なお、伊香賀委員から環境工学関連ソフトが紹介された。

  →3月号 小山雄二氏(大阪→新居委員打診)、羽深久夫氏(北海道→支部通信委員)

 Foreign Eyes

  →2月号 Michael Webb氏(その後、多忙により後回しにしてほしいとの要望があり、

   急遽、Miodrag Mitrasinovic氏(アメリカ)に依頼しました。)

  →2月号 天野裕氏

□RILEM小委員会から、紹介記事の掲載依頼について

 RILEM小委員会より、RILEMのテクニカル・コミッティの紹介記事の掲載依頼について、掲載するとすれば「技術ノート」か「活動レポート」になろうという前提で議論した。①「技術ノート」として見ると、企画内容として不十分であるので、全体構成を4回程度の企画案としてまとめていただく。②「活動レポート」であれば、活動報告的な内容で随時掲載する。という2つの選択肢を検討していただくよう、RILEM小委員会に回答することとした。

□「情報ネットワーク」の改変案について

 標記について、情報委員会(編集委員会の上部委員会)で議論されている内容が事務局から報告された。改変の方針として、①分かりやすい誌面を構成する、②情報の多様化を図る、③経費の削減を図る、こととし、具体的なイメージが示された。

 誌面レイアウトについては、それぞれの項目ごとに分けたレイアウトやデザインを鈴木一誌氏に依頼する方針が確認された。

□ホームページについて

 大崎幹事より、進行状況が報告された。

□総合論文誌構想について

 布野委員長より、2002年度から新たに『建築雑誌』増刊として刊行される「総合論文誌」の構想が説明された。この刊行に伴い、「建築年報」の独立刊行を廃止すること、『建築雑誌』9月号の特集を「建築年報」の内容に充てる方針が説明された。

 

会議後、松山さんから、『路上の症候群 19782000 松山巖の仕事Ⅰ』(中央公論新社)を頂く。「何冊でるんですか?」と問うと二冊とのこと。二冊目は長めの論考を集めたという。じっくり読ませて頂こうと思う。

 

20011029

政策科学研究所(東京)に呼ばれ「アジアの都市と居住モデル」と題して講義。「都市における人間とテクノロジーに関する研究会」という。機械学科の先生が主体だけれど社会科学系の先生も多い。こんなテーマであれば建築学会はもっと活躍すべきだ、と思う。

 

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