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2026年2月20日金曜日

富田玲子『小さい建築』書評,共同通信,200802

 富田玲子『小さい建築』書評,共同通信,200802

 富田玲子 『小さな建築』 みすず書房 2007

 

「小さな建築」とは、小さな規模の建築ということではない。「五感がのびのびと働く建築」「心身にフィットする建築」「孤立感や不安感を感じさせない建築」が「小さな建築」である。言葉だけだといささかもどかしいが、「貧しい空間」がただ積み重なるだけの超高層建築や外の見えない閉鎖的な地下空間は駄目だ。建築家として、つくりながら考えてきたこと、あるいは大切にしてきたことが、このタイトルに込められている。

著者は、東大工学部建築学科の最初の女子学生であり、世界的建築家である丹下健三に学び、吉阪隆正に師事した。そして、日本を代表する建築グループ「象設計集団(チーム・ズー)」の創設者となる。沖縄の仕事でデビューするが、その「今帰仁公民館」「名護市庁舎」は、近代建築のあり方にいち早く警鐘を鳴らす作品として高い評価を受けた。以降一貫して地域に根ざした建築をつくり続けている。その仕事を振り返り、日本のまちと建築の未来を思い、設計の理念と方法を伝えるのが本書である。

まず取り上げられるのは子どもたちのための建築、そして、老人たちのための建築である。子どもがいきいきと育ち、老人たちが楽しく暮らす街でなければ街ではない。さらに街の人々と一緒につくりあげてきた様々な公共建築の事例が語りつくされる。

興味深いのは、その建築への思いが自らの育った家、住んできた家に即して語られることである。大野勝彦設計のプレファブ住宅「セキスイハイムM1」を購入したことなどエピソードもふんだんだ。一緒に仕事をしてきた仲間たちのことも実に楽しげに振り返えられる。夫君林泰義氏は、まちづくりの伝道師として知られる。「頭脳がひとつでは、豊かな建築は生まれない」、「協働設計は楽しい」のである。

全体を通じて、建築をつくること、街をつくることの楽しさがほのぼのと伝わってくる。気品に満ちた「富田ワールド」が気持ちいい。住宅を建てようとする人、建築を志そうとする人、まちづくりに関心を持つ人、そうしたすべての人にとっての必読書である。

 

 


 


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