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2022年3月18日金曜日

『図書新聞』読書アンケート 2012上半期 下半期

 『図書新聞』読書アンケート 2012上半期 下半期  

布野修司

 

東北大学大学院経済学研究科 『東日本大震災復興研究Ⅰ』河北新報出版センター 

②地井昭夫『漁師はなぜ、海を向いて住むのか?』工作舎

③宇杉和夫『地域主権のデザインとコミュニティ・アーキテクト』古今書院

3.11後、復旧復興支援のことが頭を離れない。自らを省みて忸怩たるものがあるが,この国のガヴァナンスの欠如に腹立たしさを超える思いもある。①は,この一年間の動きを追いかけた共同研究のレポート。事態は深刻である。想像以上に人は動いているし、仙台一人勝ちの復興バブルが現実となっている。冒頭にいくつかのシナリオが検討されているが、「復興ならず」が既に見え始めている。②は、漁村研究者であった著者の遺稿集。高台移転をめぐって地域が分断される中で、漁村再生の根本を教えてくれる。③は、地域再生、震災復興のためにコミュニティ・アーキテクトと呼ぶ職能の存在、その必要性を力説している。阪神淡路大震災後に『裸の建築家―タウンアーキテクト論序説』を書いたが、その方向が間違っていなかったことを確信。その他、岩佐明彦『仮設のトリセツ もし、仮設住宅で暮らすことになったら』主婦の友社など震災復興をめぐる出版が続いている。問われているのは日常の暮らしの拠ってたつ基盤であり、それを鋭く深く突き詰める思索である。

                                  布野修司

 

①伊東豊雄『あの日からの建築』、集英社新書

②駒村圭吾・中島徹『3.11で考える日本社会と国家の現在』、日本評論社

リム・ボン『歴史都市・京都の超再生』、日本評論社

①は、3.11以後、被災地に通い続ける「世界的」建築家による現代建築論。伊東豊雄は、デビュー以降一貫して建築ジャーナリズムの最前線に立ち、「状況」に敏感に反応しながら発言を続けてきた。常に「新奇」な形態を追い求めてきた建築家として知られ、注目されてきた。その伊東が東日本大震災以後、各地に「みんなの家」と呼ぶ集会施設を建て続けてきた。小著であるが、本書には、自らのこれまでの軌跡を含めて、建築を問い直そうとする真摯な言葉がある。②は、ムック版であるが、気鋭の憲法学者たちが、3.11以後の日本の社会と国家を問う。手前味噌であるが、日本建築学会の復旧復興部会が開催した、憲法学者と建築家(山本理顕、内藤廣、松山巌)によるシンポジウム「復興の原理としての法」も採録されている。何故、居住制限が可能なのかなど刺激的な議論が含まれている。3.11以後、日本の再生そのものが問われる中で、また、各地で地域再生が問われる中で、③は日本の「古都」京都の再生を問う。京都に十数年住んでいたからそのまちづくりの難しさはよくわかるが、そこで格闘してきた著者の「京都モザイク論」には着目してきた。京都の「光」と「影」をストレートに論じ、「部落問題」にも触れる。







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