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2022年3月20日日曜日

『図書新聞』読書アンケート 2014上半期 下半期

『図書新聞』読書アンケート 2014上半期 下半期  

 

蓑原敬他『これからの日本に都市計画は必要ですか』学芸出版社

蓑原敬・松隈洋・中嶋直人『建築家 大高正人の仕事』X-Knowledge

木下庸子・植田実編『いえ 団地 まち』住まいの図書館出版局

南一誠『時と共に変化する建築 使い続ける技術と文化』UNIBOOK

 ①は随分刺激的なタイトルである。しかも「白熱講義」とある。『都市と劇場-都市計画という幻想』(布野修司建築論集Ⅱ)という本を書いている筆者は興味津々で手に取った。都市計画の限界はそもそも明らかであり、そのどこに突破口を見出すかが問題だと思ってきたけれど、必要ですか、ということになると、いっそないほうがいいかとも思うのである。本書は、蓑原敬というアメリカで都市計画を学び建設省(現国交省)で住宅行政に関わった経歴をもつ一九三三年生まれの超ヴェテラン都市計画家と一九七〇年代生まれの四〇歳前後の都市計画・建築学の専門家グループ(次世代都市計画理論研究会)の議論の記録である。確かに、結に言うように、「このドキュメントは「問い」には満ちてはいるが「答え」の多くは教えてくれない」。しかし、議論の筋には共感できた。蓑原敬の発言が一本の軸となっているのが大きい。

②は、その蓑原が中心となって編まれた建築家・大高正人の全集である。実は、①は、②の企画で蓑原敬、中嶋直人が協同したことがきっかけになったという。日本の戦後建築のひとつの流れを代表するその軌跡を振り返るための必携本である。③は、今日の日本の住宅地の風景をつくったといっていい日本住宅公団(現都市整備公団UR)の記録である。④は、ストック活用の時代の建築の方向を示唆する。

東日本大震災の復興が遅々として進まない中で、建築、都市の依って立つたつ基盤そのものの見直しのみが進行している。もどかしいけれど、当然の営為ではある。



 

飯島洋一『「らしい」建築批判』青土社

松村秀一『場の産業 実践論』彰国社

藤村龍至『プロトタイピング――模型とつぶやき』LIXIL出版

市川紘司編『中国当代建築 北京オリンピック、上海万博以後』flick studio

 ①は,力の入った現代建築批判である。執筆の大きな動機となっているのが、新国立競技場問題であり、ザハ・ハディド案である。「らしい」建築とは、「アイコン建築」とも呼ばれるが、アイコンとして商品化される「奇抜」な建築、具体的には世界的に著名な建築家たちによってブランド化される建築デザインをいう。本書においては、ザハのみならず、コールハース、安藤忠雄、伊東豊雄といった建築家たちも徹底批判されている。平たく要約すれば、世界資本主義に翻弄されることで建築が社会性を失っているということであるが、社会性を標榜する被災地での建築家の活動も俎上に載せられており、批判は重層的である。建築界で広く議論されるべき提起がある。④は「アイコン建築」が跋扈した中国の現代建築の特集であるが、中には王澍のような興味深い建築家の作品もとり挙げられている。③は、ソーシャルデザインを主張して建築のプロトタイプに拘る気鋭の建築家の小作品集。②は、建築に新しい仕事のかたちをめぐる討論集。「場の産業」と名づけられるが、最早「箱の産業」ではないということである。建築界の再構築の方向が探られている。




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