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2025年3月9日日曜日

「住宅生産組織研究会」 、「鯨の会」通信 連載⑦  1988

 「住宅生産組織研究会」         「鯨の会」通信 連載⑦  1988                                                    布野修司

 

 今回の日本建築学会は熊本で開催された。例によって飲みっぱなしで、昨日一日お酒を抜いたところである。最後の日の午前中には山本理顕さんの県営住宅の現場をみた。二階が打ち上がったところで竣工が楽しみである。公営住宅だって色々出来るんだよ。最初の日には林昌二さんに無理やりおごってもらった。長谷川逸子さんとはしこたま飲んだ。「長谷川さんねえ、最近、一寸天狗になってんじゃない」などといったら叱られてしまった。

 坂本一成さんとはホテルのロビーで一寸話しただけで、飲む約束は果たせなかった。東工大の青木義次研究室につかまったからだ。何と諸君!青木研究室ではゼミで、『戦後建築論ノート』を読むのだという。批判があるという学生がいるので「さあこい」といったら、「もごもご」だって。だらしねえの。でも、青木研究室にあらためて行くことにする。

 色んなことがあったんだけど、小生の出た研究協議会「すまいの近代化論-学際的議論から」は最悪であった。主旨説明をして座っただけだ。パネラーは『ケガレの構造』の波平恵美子さんなどよかったのだけれど、時間配分が悪い。くだらない発言が多くて議論にならない。今まで参加してきたシンポジウムのワーストスリーに入る。後で、何人かの先生に「たいくつそうだったねえ」「あくび5回してたよ」、「おまえは態度悪いよ」なんて言われてしまった。昨年の協議会の資料『住居集落研究の方法と課題 討論:異文化研究のプロブレマティーク』の方がはるかに水準が高い。北川君、磯貝君が「ワープロ」してくれたやつだ。

 熊本だけど、何故か、鹿児島の焼酎「伊佐美」を飲んだぞ。幻の芋焼酎だという。「幻の・・・」はよくあるけれど、本物らしい。店では売られてないという。一本一万円。25度ぐらいで、まろやかで飲みやすい。その酒ビンを抱えていたら、飲んべえ先生が寄ってくる寄ってくる。建築学会の飲んべえリストができてしまった。

 熊本は、いま磯崎新をコミッショナーに1992年のアートポリス展を目指して、色々な建物が建てられつつある。理顕さんのもその一環である。若い細川県知事の挨拶を聞いたけど、「四角い建物は駄目、熊本の建物は全て三角にしろ」だって。こんな知事が47人いたら面白いだろうねぇ。フアッショ的だけど。

 さて、スケジュールがめちゃくちゃになってきた。10月30日から11月7日、インドネシアで国際会議。ユネスコ主催で   Regional  Seminar   on  Integrating Traditional Values into   Contemporary  Architecture  &  Planning  of  Human  Settlements in Developing Countries に参加する。10月28日には、川口市で安藤忠雄さんとちょっと対談。その前日は10月27日は、梅棹忠夫(国立民族博物館館長)大先生と対談。11月10日~12日は、富山で木造建築フォーラムの雇われ司会。11月19日~?は、安藤正雄先生のいるロンドン。

 とここまで書いたところで、研究室の倉沢君と二木君がインドネシアに行くという。行きと帰りの飛行機を合わせるべく旅行代理店に電話したところだ。旅行代理店は、アイ・ビー・プランニング(西潟悦子さん505-2101)。東南アジアでいつもお世話になってきたのだけど、二年ほど前に独立した。大変親切だから使ってあげてちょうだい。インドネシア往復が10万円。

 9月はずいぶんと原稿を書いた。といっても百枚くらいだから、たいしたことないのだけれど。『室内』の連載は終った(もしかすると続くかも知れない)のだけれど、『住宅と木材』(マイナーか?)の連載「雑木林の世界」を始めたところ。「ラディカリズムの行方」(『建築文化』1989年10月号)は、世代論なんだけれど、ある企画のジャブとして書いた。さて連載を続けよう。

 

 三期の八巻君の学年(1981年度)だ。この学年も多士才々だ。みんな頑張っている。天使の声、谷田君には既に少し触れた。関口君-理論家だ「建学連」を引っ張り、次の学年に大きな影響を及ぼした。鯨の会にもよく出席してくれるけど、今、何を考えているのか、今度じっくり聞いてみたいと思う。上島君-浦辺鎮太郎事務所で頑張っている。君は知っているのか。森京介事務所から転出の際、僕のところに電話があって、「先生が推薦するなら採用します」とボスが言ったのを。それなのに、ちっともお礼の品が届かない(冗談だよ?)ばかりか連絡もない。わが研究室の諸君はしつけが悪いとよく言われるのだけれど、まあ自業自得というべきか。関君は、伊那で頑張っている。十周年パーティーであったけど元気そうだ。望月信男君-わが研究室、公務員第一号。パーティーに来てくれた。そろそろ館山で面白いことを仕掛けて呼んでよ。そういえば、研究室の磯貝君が公務員(板橋区役所)を受かったところだ。第2号かな。土屋公治-細田工務店。この間、ひょっこり、人買い(求人)にきて、藤田君(1987年卒)をさらって行った。細田工務店も石山修武なんか呼ばずに布野を呼ぶようにね。

 あとは、仏教の宇宙観の安在君をはじめ、阿久沢、今野(佐々木)、鈴木、濱滝、船引には卒業以来あっていないのではないか。みんな元気かあぁぁぁ。

 ところで、このごろ開始したのが生産組織研究である。八巻君が大学院に行って、熊谷、秩父の調査を始めて、その軸になるのであるが、東南アジア研究と住宅生産組織研究は、研究室の大きな流れをつくってきた。『群居』21号特集「町屋」-小規模住宅生産の可能性を是非みて欲しい(群居の申込の電話番号03-359-4541だよ)。住宅生産組織研究会のこの間の歩みが収録されている。その「関連研究リスト」によると冒頭に「地域型住宅-熊谷その1 熊谷地域の概要および住宅供給の構造 布野修司他 1982・7」とある。ということは、1981年に、熊谷に通いだしていたことになるのである。

 住宅生産組織研究会というのは、東京大学松村研究室、芝浦工業大学藤沢研究室、工学院大学吉田研究室、都立大学深尾研究室、職業訓練大学松留研究室、千葉大学安藤研究室、大野アトリエおよびわが研究室の7大学、8大学でつくってきた研究会である。

 何故、住宅生産組織研究会に参加するようになったのかというと、以下のような経緯がある。東大の助手の時、給料もらってんだから何かやらなくちゃということでやったのは、公団住宅の増改築の調査である。増改築に目をつけたところはやっぱりヘソ曲がりかもしれない。それで、東洋大に来て、まずやったのは、原広司さんが基本計画をやった角栄団地の調査である。また、毛呂山の永山団地の調査である。その他は、稲葉君が中心になってまとめてくれたのだけれど(???)、一期、二期の諸君は覚えているだろう。そうしているうちに、どうも住まい手ばかり調査していても駄目じゃないか、つくり手の方も押さえる必要がある、と考えるようになっていた。その頃、既に『群居』の準備を始めていたのであるが、大野勝彦さんを通じて、同級生である安藤正雄先生に再会した。それが研究会に参加するきっかけだったのである。 ところで、住宅生産組織研究会へのわが研究室の参加は、東南アジア研究に心血(オーバーか)を注いでいたこともあって、また地の不利もあって、実を言うとあんまり熱心ではなかった。会に名前を入れさせて頂いてきたという感じかも知れない。

 ところが、ついにやった。東洋大学で研究会を開催したのである。プログラムは以下の通りである。

 

住宅生産組織研究会の皆様

             布野研究室

前略

 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

 さて、来る9月29日(金)の生産組織研究会は川越で開かれます。その詳細についてのご案内を送らせていただきます。

 先日の生産組織研究会で案が出ていましたように、今回は川越の市内見学を考えております。また、太田邦夫先生、勝瀬義仁先生を迎えてのスライドレクチャー。さらには、松村先生が大好きなカラオケパーティーまでも・・・。

 皆様にはあまり馴染みのないだろう川越を多少なりとも見ていただきたいと思っておりますので多数の御出席をお待ちしております。

 つきましては、川越市内の案内の都合もありますので、見学からお付き合い下さる方の人数をお知らせいただきたくお願い致します。またレクチャーから御出席の方の人数も合わせてお知らせ願います。

 尚、集合場所、時間、市内見学等につきましては、同封のプログラム、及び案内図を御参照下さい。

                草々・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・                        

・9月29日 生産組織研究会プログラム      ・ 上村君(1985年度)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・などは、あまりの感激で有

・時間    ・内容                                ・場所                ・給休暇をとってかけつけて

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くれた。               

13:00 ・川越市内見学            ・川越市内            ・ 実に楽しい、有意義な会

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・であったと思う。       

15:00 ・スライドレクチャー・東洋大学川越校舎                           

        ・太田邦夫「ヨーロッパの木造建築」    ・建築土木実験棟                             

        ・勝瀬義仁「東南アジアの住宅生産組織」・視聴覚室                                   

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17:00 ・ビア・パーティー    ・同上 模型製作室                           

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19:00 ・懇親会(カラオケパーティー)  ・鶴ヶ島 北海 地階                          

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21:00   ・解散?                        ・鶴ヶ島                                     

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 上村君(1985年度)などは、あまりの感激で有給休暇をとってかけつけてくれた。実に楽しい、有意義な会であったと思う。 

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布野修司 履歴 2025年1月1日

布野修司 20241101 履歴   住所 東京都小平市上水本町 6 ー 5 - 7 ー 103 本籍 島根県松江市東朝日町 236 ー 14   1949 年 8 月 10 日    島根県出雲市知井宮生まれ   学歴 196...