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2021年8月18日水曜日

空間の美学03 景観壊す無国籍デザイン 住まいの向上と無縁,学芸通信,新潟日報 19900814

 空間の美学 学芸通信,新潟日報連載 全6回 199007310911

景観壊す無国籍デザイン 住まいの向上と無縁,空間の美学3,学芸通信,新潟日報 19900814

展示場の風景                03

  PHOTO:展示場の住宅の並ぶ風景・○○風住宅

 


 

 住宅展示場を歩いてみよう。夢のような住宅が並んでいる。それがまた実にヴァラエティーに富んでいる。地中海風あり、アーリー・アメリカン風あり、コロニアル・スタイル(植民地様式)風あり、ヴィクトリア様式風あり、ドイツ民家風あり、数寄屋風ありと様式が細かく区別される、それほど多彩である。

 住宅展示場の多様なデザインをみるとつくづく日本の住まいは豊かになったと思う。かっては、住宅のスタイルなど問題とされなかったのである。

 プレファブ住宅の歴史を振り返ってみればいい。一九五九年に三坪程のミゼットハウスが初めて売りに出されて以来、六十年代のプレファブ住宅は、安かろう悪かろうの代名詞であった。プレファブといえば、バラックのイメージなのである。

 しかし、今や高級住宅というイメージがむしろ強い。その転換点は、オイルショックだ。プレファブ住宅は全く売れなくなる。プレファブ住宅の商品の種類が各社とも一気に増えた。商品化住宅の様式化の現象と呼ばれるのであるが、スタイルそのものが問題とされ出したのである。価格や規模のみならず、住宅の質が、その豊かなイメージが求められ始めたのだ。

 しかし、住宅デザインの多様化現象は、本当に住まいの豊かさを示すのであろうか。デザインは多様でも、例えば、間取りはそんなに多様ではない。nLDKという記号でわかってしまう。暮らし方のほうが同じようなパターンをしているのだから無理もない。デザインの違いといっても、住まいの本質的なあり方とは無縁のように思えなくもないのだ。

 デザインの差異といっても小手先のファサード(正面)デザインの違い、顔のお化粧の仕方の違いといえるかもしれない。それに、決定的に違うかというとそうでもない。全て和洋折衷であるといってもいいのではないか。それぞれ、○○風であって、きちんとした様式そのままではないのである。いろいろの国の様々な様式の断片が組み合わされているだけといえば、いえなくもない。いってみれば全て無国籍のデザインだ。

 かって民家は、全て同じような間取りで、同じような材料でつくられていた。そうした意味では画一的であった。しかし、それが集まって豊かな村や町の景観をつくりだしてきた。地域地域でその景観は多様であった。

 しかし、現在の住宅デザインの多様性は、集まることによって不協和音を奏でるだけだ。特色なくホワイトノイズ(白色騒音)化してしまう。住宅展示場はそうした日本の町の縮図である。

 

01 本当の豊かさとは 経済優先を考え直せ,空間の美学1,学芸通信,新潟日報 19900731

02 今なぜ入り母屋御殿 底流に想像力の貧困,空間の美学2,学芸通信,新潟日報 19900807

03 景観壊す無国籍デザイン 住まいの向上と無縁,空間の美学3,学芸通信,新潟日報 19900814

04 簡素化した建築儀礼 建てる過程を大切に,空間の美学4,学芸通信,新潟日報 19900828

05 都市住宅の型 伝統育てるために必要,空間の美学5,学芸通信,新潟日報 19900904

06 物過剰の追放 「狭く貧しく」返上を,空間の美学6,学芸通信,新潟日報 19900911

 

 

住まい・空間の美学  住まいの豊かさとは?

 

 1.一坪一億円               ○価格  

 2.入母屋御殿                            ○イメージの画一性

 3.展示場の風景               ○多様性の中の貧困

 4.建築儀礼                              ○建てることの意味

 5.都市型住宅                           ○型の不在

 6.ウサギ小屋                        ○狭さと物の過剰

 7.電脳台所                              ○感覚の豊かさと貧困

 8.個室 家の産業化                      ○家族関係の希薄化

 9.水。火。土。風            ○自然の喪失 

10.死者との共棲                          ○歴史の喪失

 

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