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2021年8月15日日曜日

見聞録21  京都都心の惨状 林立するマンション 消え逝く町家  覆いがたい理念の分裂

 布野修司 共同通信 学芸=見聞録 連載全21回 2000年8月~20024

 京都都心の惨状 林立するマンション 消え逝く町家

  覆いがたい理念の分裂

 


京都の、堀川、烏丸、河原町の南北通り、そして御池、四条、五条の東西通りで囲まれる地区を通称「田の字」地区という。祇園祭ゆかりの山鉾町が含まれる京都の核心域である。訪れる機会があれば、とにかく歩いてみて欲しい。なんともちぐはぐな光景を目の当たりにして考え込んで欲しい。

「田の字」地区はいま騒々しい。ここそこに工事現場がありクレーンが聳えている。不況にも関わらず、未曾有のマンション建設ラッシュなのだ。虫食い状に空き地と駐車場が蔓延り、ビルの谷間に町家が埋もれつつある。

この間喧々囂々たる非難を浴びているのが高松伸の手掛ける巨大なマンションだ。一棟のマンションの東西で学区が分かれる。京都の街割りには明らかに大きすぎる。それに新規さを売ってきた高松にしては何の変哲も工夫もない。皮肉というべきか、真向かいに高田光雄・江川直樹によるマンションが同時に建設中だ。町家型集合住宅を謳い、前面を低く押さえる工夫がある。話し合いを重ねた経緯もあって近隣住民は受け入れつつある。

しかし、いずれにせよ町家の規模ではない。一方で書割でもいいからかつての街並みを維持すべきだという主張がある。また、京町家再生研究会のように現存する町家の再生を手掛ける集団もある。マンショ・ブームの一方で、それに抗するかのように大変な町家ブームだ。町家に住みたいという若者が増えている。また、町家改造の店が増えている。かくして、てんでばらばらの建物が並んで収拾がつかない。いかんともし難い。

 大きな問題は全国一律の法規定である。市としては都心に人口は増えて欲しい。地主は、建蔽率、容積率一杯に建物を建てる。京都で起こっていることは全国の大都市で起こっていることと同じだ。街並みが崩れるのは当然である。そして致命的なのは、京都に相応しい建築形式についての理念が分裂していることだ。京都にかつての面影を期待するなかれ。





京都の、堀川、烏丸、河原町の南北通り、そして御池、四条、五条の東西通りで囲まれる地区を通称「田の字」地区という。祇園祭ゆかりの山鉾町が含まれる京都の核心域である。訪れる機会があれば、とにかく歩いてみて欲しい。なんともちぐはぐな光景を目の当たりにして考え込んで欲しい。

「田の字」地区はいま騒々しい。ここそこに工事現場がありクレーンが聳えている。不況にも関わらず、未曾有のマンション建設ラッシュなのだ。虫食い状に空き地と駐車場が蔓延り、ビルの谷間に町家が埋もれつつある。

この間喧々囂々たる非難を浴びているのが高松伸の手掛ける巨大なマンションだ。一棟のマンションの東西で学区が分かれる。京都の街割りには明らかに大きすぎる。それに新規さを売ってきた高松にしては何の変哲も工夫もない。皮肉というべきか、真向かいに高田光雄・江川直樹によるマンションが同時に建設中だ。町家型集合住宅を謳い、前面を低く押さえる工夫がある。話し合いを重ねた経緯もあって近隣住民は受け入れつつある。

しかし、いずれにせよ町家の規模ではない。一方で書割でもいいからかつての街並みを維持すべきだという主張がある。また、京町家再生研究会のように現存する町家の再生を手掛ける集団もある。マンショ・ブームの一方で、それに抗するかのように大変な町家ブームだ。町家に住みたいという若者が増えている。また、町家改造の店が増えている。かくして、てんでばらばらの建物が並んで収拾がつかない。いかんともし難い。

 大きな問題は全国一律の法規定である。市としては都心に人口は増えて欲しい。地主は、建蔽率、容積率一杯に建物を建てる。京都で起こっていることは全国の大都市で起こっていることと同じだ。街並みが崩れるのは当然である。そして致命的なのは、京都に相応しい建築形式についての理念が分裂していることだ。京都にかつての面影を期待するなかれ。

 

➊仮設住宅の創意工夫 台湾のまちづくり最前線 伝統文化の継承 見聞録01,共同通信,200007

❷循環型の社会へ一戸の住宅から 石井の家 見聞録02,共同通信,200008

❸出島の復元  日蘭交渉400年 まちづくりの世界史 見聞録03,共同通信,200009

❹緑再生の巨大な実験 傷つけて癒す・・・建築の本質 見聞録04,共同通信,200010

❺出雲大社は一六丈あったのか 巨大木造建築の伝統 見聞録05,共同通信,200011

❻空調を使わないビル  エコ・オフィス 見聞録06,共同通信,200012

❼知られざるモニュメント  丹下健三の「動員学徒記念若人の広場」見聞録07,共同通信,200101

❽木匠塾の目指すもの  ざらざら,ぼこぼこの素材感 見聞録08,共同通信,200102

❾笑う住宅   くねって,捻(ひね)って,捩(よじ)って 見聞録09,共同通信,200103

❿縄文の森を埋め込む  屋上緑化 壁面緑化 見聞録10,共同通信,200104

⓫自然素材の魅力 誰でも建築家になれる 建築探偵の佳作,見聞録11,共同通信,200105

⓬建築の保存再生 建物を大事に使う時代へ 無闇に壊すな,見聞録12,共同通信,200106

⓭骨太の建築 斜めの空間 新たな空間を生み出そうとする悪戦苦闘 デコン(破壊)派の傑作!?,見聞録13,共同通信,200107

⓮バブリーなハーグの建築,見聞録14,共同通信,200109

⓯メキシコ・シティの再開発 タワーめぐり一騒動勃発,見聞録15,共同通信,200110

⓰超高層の危険隠した20世紀の「設計思想」ー何故ビルは一瞬で崩壊したか,見聞録16,共同通信,200111

⓱コレクティブ・ハウスの行方 新しい共同住宅のあり方を求めて 使われない共用空間!?,見聞録17,共同通信,200112

⓲巨大な「箱」に多様空間 はこだて未来大学,見聞録18,共同通信,200201 21

⓲土木デザインの新展開 都営大江戸線・飯田橋駅,見聞録19,共同通信,20020201

⓴古都にふさわしい建築とは 巨大マンション登場,見聞録20,共同通信,200203 11


㉑京都都心の惨状 林立するマンション 消えゆく町家 覆いがたい理念の分裂,見聞録21,共同通信,200204

 

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