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2021年7月10日土曜日

高床と土間・・・・・・・床のレヴェル 三つの高さの使い分け 高床式住居の謎

 住まいのベーシック 屋根『週刊東洋経済』20020406


高床と土間・・・・・・・床のレヴェル
三つの高さの使い分け
高床式住居の謎

 





床をどう設定するかによって住まいのしつらえは大きく異なる。日本では、玄関で靴を脱いで履き替える。全く土足という住まいは今でも珍しいだろう。畳の部屋が大抵一部屋はまだある。しかし、一方、机やベッドのないのも最早珍しい。明治になって机やテーブルが導入されて以来、僕らは椅子座か床座かどちらかに決定し得ないでいる。

日本の住宅の起源と伝統は、土間式の竪穴式住居・農家住宅の系列と高床式の高倉・貴族住宅(寝殿造り、書院造り)の系列に分けて、前者が北方系、後者が南方系と説明される。北方にも高倉の系列はあり単純ではないが、高床の形式が南方に多いのはいうまでもない。日本の現代住居はせいぜい「揚げ床」であって高床とは言わない。しかし、地表面と生活面となる床を区別するかどうかは大きな問題である。

世界を広く見渡すと、とりわけ、イースター島からマダガスカル島までオーストロネシア世界の全体に高床式の住居が分布している。ところがいくつか例外がある。ヴェトナムの南シナ海沿岸、そしてジャワ島、バリ島、ロンボク島である。また、西イリアンとチモール島の高地、そしてモルッカ諸島の小さな島ブル島が高床式住居の伝統を欠いている。ヴェトナムは中国の影響であるとして、同じジャワでもジャカルタのある西ジャワ(スンダ地方)には高床形式があるから単純に気候風土の問題とも言えない。高床式住居の起源とルーツをめぐっては未だ謎がある。

謎は謎として、あることに気がついた。土間式というけれど、ベッドが用いられる場合がある。土間式のロンボク島では屋根のついたベンチ様のブルガという露台が用いられる。また、高床の倉の下に床が張られて使われている。さらに、住居の内外で段差が設けられる場合がある。

農家住宅といっても、時代が下れば土間のみではなく床が張られるようになる。実は竪穴式住居にも床が張られていた可能性が高い。言いたいのは、どんな住まいでもいくつかのレヴェル(高さ)を使い分けているのではないか、ということだ。すなわち、床面、床上3045cm(椅子面、座机面)、そして床上60cm80cm(テーブル面)の三つである。西欧人だって床上に寝そべることはある。下足を脱ぐ伝統は実は日本に限らない。人間の活動、姿勢に大きな違いがあるわけではないだろう。三つのレヴェルをうまく使い分けている住まいが居心地いいのである。

 


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