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2021年7月28日水曜日

見聞録03 出島の復元 日蘭交渉400年 まちづくりの世界史

 布野修司 「見聞録」01-21 共同通信 2000.072002.04


 出島の復元  日蘭交渉400年 まちづくりの世界史

 写真 出島の中の出島 布野修司

 


オランダ船リーフデ(慈愛)号が大分県臼杵湾の佐志生に漂着したのは関ヶ原の合戦の年だ。以降、鎖国体制にも関わらず、日本とオランダの交渉は続く。今年は日蘭友好四〇〇周年である。縁の深かった平戸や長崎などでは様々な催しが開かれている。

 ケープ・タウン、コロンボ、ゴール(スリ・ランカ)、ジャカルタ(バタヴィア)、ゼ-ランジャー城(台湾)、いずれもオランダが造った町である。リーフデ号のウイリアム・アダムズ(三浦按針)やヤン・ヨーステンはよく知られるが、ヤン・ファン・リーベックのような興味深い人物もいる。外科医の卵であった彼は若干二十歳で東インド会社の船に乗り、バタヴィアに赴く。一六四二年には出島を訪れている。単独で絹貿易に従事するが失敗、紆余曲折があって、一六五一年、ケープ・タウンの建設を命じられる。その後、マラッカ総督となり、オランダに帰ることなくバタヴィアで没した。オランダと日本をめぐる様々な糸を手繰りながら世界史に思いをめぐらすのは楽しい。

 その大きな手がかりとなるのが出島の復元である。出島は既に島ではなく、ビルの谷間の小公園といった趣だ。かつてカピタンたちがビリヤードに興じた庭園に大きな模型が置かれていて全貌がわかる。ハウス・テンボスのようなテーマ・パークは所詮キッチュ(まがいもの)である。出島はこの場所に存在したという事実がある。そして復元によって、空間のスケールを感じることができる。

 他のオランダ植民都市と違って、出島は長崎の商人たちによって建設された。オランダ人には監獄であった。このほど世界文化遺産に指定されたゴールの町はオランダ人の手になるがオランダの町の面影はない。バタヴィアの建設にはシモン・ステヴィンの理想都市のモデルが用いられたらしい。出島の復元を通じて古今東西の街づくりを比較するのも一興である。  











布野修司 「見聞録」01-21 共同通信 2000.072002.04

 ➊仮設住宅の創意工夫 台湾のまちづくり最前線 伝統文化の継承 見聞録01,共同通信,200007

 ❷循環型の社会へ一戸の住宅から 石井の家 見聞録02共同通信200008

 ❸出島の復元  日蘭交渉400年 まちづくりの世界史 見聞録03共同通信200009


 ❹緑再生の巨大な実験 傷つけて癒す・・・建築の本質 見聞録04共同通信200010

 ❺出雲大社は一六丈あったのか 巨大木造建築の伝統 見聞録05共同通信200011

 ❻空調を使わないビル  エコ・オフィス 見聞録06共同通信200012

 ❼知られざるモニュメント  丹下健三の「動員学徒記念若人の広場」見聞録07共同通信200101

❽木匠塾の目指すもの  ざらざら,ぼこぼこの素材感 見聞録08共同通信200102

 ❾笑う住宅   くねって,捻(ひね)って,捩(よじ)って 見聞録09共同通信200103

 ❿縄文の森を埋め込む  屋上緑化 壁面緑化 見聞録10共同通信200104

 ⓫自然素材の魅力 誰でも建築家になれる 建築探偵の佳作見聞録11共同通信200105

 ⓬建築の保存再生 建物を大事に使う時代へ 無闇に壊すな見聞録12共同通信200106

 ⓭骨太の建築 斜めの空間 新たな空間を生み出そうとする悪戦苦闘 デコン(破壊)派の傑作!?見聞録13共同通信200107

 ⓮バブリーなハーグの建築見聞録14共同通信200109

 ⓯メキシコ・シティの再開発 タワーめぐり一騒動勃発見聞録15共同通信200110

 ⓰超高層の危険隠した20世紀の「設計思想」ー何故ビルは一瞬で崩壊したか,見聞録16,共同通信,200111

 ⓱コレクティブ・ハウスの行方 新しい共同住宅のあり方を求めて 使われない共用空間!?,見聞録17,共同通信,200112

 ⓲巨大な「箱」に多様空間 はこだて未来大学,見聞録18,共同通信,200201 21

 ⓲土木デザインの新展開 都営大江戸線・飯田橋駅,見聞録19,共同通信,20020201

 ⓴古都にふさわしい建築とは 巨大マンション登場,見聞録20,共同通信,200203 11

 ㉑京都都心の惨状 林立するマンション 消えゆく町家 覆いがたい理念の分裂,見聞録21,共同通信,200204

 

 

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