ポルト:布野修司編:世界都市史事典,昭和堂,2019年11月30日
ポルト 港の中の港
ポルトガル、ポルト大都市圏
ポルトガル北西部に位置する首都リスボンに次ぐポルトガル第2の都市ポルトの起源は,ローマ以前に遡り、ケルト文化の名残であるシタデルが市外に残存している。ローマ帝国時代、4世紀末にはオリシポ(現在のリスボン)とブラカラアウグスタ(現在の ブラーガ)とを結ぶ港町として栄えてお り,ポ ルトゥス・カーレ(ラテン語でPortus Cale、「カレの港」の意)の名で知られた。それが単にポルトと呼ばれるようになるのは、海上交通と河川交通の接点に位置して、ポルトガルを代表する港となったからであるが、ポルトガルの名もポルトに由来する。ローマ時代のポルト周辺をコンダドゥス・ポルトカレンシスといい、ここに成立した王国をポルトガル王国と呼ぶようになるのである。
ポルトの名称が一般化するのは12世紀頃で,一方でポルトゥス・カーレはドーロ川と北方のリマ川にはさまれた広範囲な地域をさす地名となった。ゲルマン人による支配を経て,716 年に南から侵攻したモーロ人に占領され,3世紀半にわたってイスラーム勢力よって統治されたが、ポルトガルはいち早くレコンキスタを完了し(1092年)、ヨーロッパで最初の国民国家となる。
ポルトゥス・カーレは,カスティーリャ国王アルフォンソ6 世により1096 年にフランス・ブルゴーニュ地方出身の騎士エンリケ(アンリ)に譲渡され,その息子のアフォンソ・エンリケスによって1143年に建国されたのがポルトガル王国である。
中心市街地は,ドーロ川河口の右岸の丘凌上に発達する。14世紀中頃には城壁が築かれ,中世から近代にかけて港湾都市として発展していく基盤が整備される。そして15世紀には大航
海時代をポルトガルが先導することになる。
その幕開けとなったエンリケ航海王子の1415年のセウタ(モロッコ)攻略の船団が出航したのはポルトからである。
17世紀以降、ドーロ川流域で生産されるワインの輸出港としての重要性が高まり,特にイギリスがポル トガル産ワインをフランス産ワインより1/3 安い関税で輸入するようになって(メシュエン条約締結)以降,イギリス向けの輸出が急増した。こうしたワインにおけるブドウ園の開発が急速に進められた。流域で醸造されたワインは,ラベーロス船と呼ばれる小型帆船を利用して河口のビラノバデガイア地区に運搬され貯蔵庫で熟成した後、ポートワイン(ポルト・ワイン)として出荷された。この市名を冠したワインはブランデーを加えて発酵を途中で停止させ,糖分を残したまま熟成させる独特の製法により醸造される。デザートワインとして好まれ,現在でもポルトガルを代表する輸出品の1 つとなっている。
19世紀には郊外に延びる主要道路に沿って都市化が進んだ。とくに,1892年に都心の北西約8km の海岸に近代的な湾港設備を持つレーションイス港が完成してからは,港に近いドーロ川以北の地域において市街地の拡大化が進んできた。
市内には、12世紀に建造され17世紀から18世紀にかけて改造されてきた銀細工の祭壇が見事なカテドラル,14世紀に建造された金泥細工とよばれるバロック装飾を施されたサンフランシスコ教会(図2),76mの高塔を持つバロック様式のクレリゴス教会(図3),1834 年に証券取引所として建設されたボルサ宮など,観光客に人気の高いスポットが集中している。また、市の発展とともにドーロ川の両岸を結ぶ橋梁の必要性が高まり,ドナマリアビア橋(1877 年,図4),ドン・ルイス1 世橋が(1885 年)が建造された。これらを含む旧市街地は、1996年「ポルト歴史地区」(ポルト歴史地区、ルイス1世橋およセラ・ド・ピラール修道院)として世界文化遺産に登録された。
ポルト周辺は国内有数の人口稠密地域で,繊維,機械, 化学,食品,靴,陶器,家具など多様な製品を生産する工場が集積する。第二次世界大戦後の著しい都市化の結果, 実質的な都市圏は市域をはるかに超え,周辺の15 自治体(ムニシビオ)とともにポルト大都市地域を構成する。この大都市地域はポルト県の北西からアベイロ県北部にかけて広がる。
(林はるか・布野修司)
●参考文献●
·
John Lomas, ed.(1889), "Porto", O'Shea's
Guide to Spain and Portugal (8th ed.), Edinburgh: Adam & Charles Black, retrieved 2016-02-10
· "Porto", A Handbook for Travellers in Portugal (2nd ed.), London: John Murray, 1856, OCLC 34745440, retrieved 2016-02-10




0 件のコメント:
コメントを投稿